人々の生活に欠かせなくなった通信。産業を革新すると言われる「5G」(第5世代移動通信システム)以降も様々な技術進化を遂げていきます。通信専門紙「日経コミュニケーション」や日本経済新聞社などで長年、通信分野を担当してきた筆者が、新たなトレンドの息吹を追います。

堀越功の次世代通信羅針盤
目次
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再発防止策で見えてきたKDDIの課題、大規模通信障害の教訓
KDDIは2022年7月29日、同月2日未明に起こした大規模通信障害の原因と再発防止策を発表した。不具合の連鎖を生んだ障害の発端は、手順書の取り違えという単純ミスであることが明らかになった。KDDIが公表した原因と再発防止策からは、同社のネットワーク運用ノウハウが不十分であったことも見えてきた。K…
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なぜ大規模・長期化したのか、KDDI通信障害を検証する
KDDIが2022年7月3日と同月4日に相次いで開催した会見から、今回の通信障害で何が起きていたのかが徐々に明らかになってきた。果たしてKDDIの対応は適切だったのか。現時点の情報から検証してみたい。
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KDDIが先陣「ネットワークスライシング」、現在の限界と進化の道
いよいよ日本国内で、5G(第5世代移動通信システム)のキラーサービスといわれる「ネットワークスライシング」の商用化が始まった。KDDIが2022年2月末、法人を対象にいち早くネットワークスライシングの商用展開を開始したからだ。ネットワークスライシングは、1つの物理的なネットワークを用途に応じて仮想…
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インテル独壇場にクアルコムら挑む、仮想化基地局「vRAN」主導権
楽天モバイル(以下、楽天)が全面的に採用したことで世界的な注目を集めている仮想化基地局「vRAN」。現在vRANのチップ周りをほぼ独占する米Intel(インテル)の牙城を崩すべく、米Qualcomm(クアルコム)や米Dell Technologies(以下、デル)などが新たなvRANソリューション…
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ドコモもついに「なんちゃって5G」、4G電波の5G転用はなぜ今か
NTTドコモが2022年春から4G周波数帯の一部を5G(第5世代移動通信システム)向けに転用する方針を明らかにした。2年後の24年3月に人口カバー率90%超を目指す。
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LTEの父が指摘する「2050年の大変化」、標準規格の境界が消滅?
「2050年ごろには標準規格の境界がなくなり、標準化がなくても通信が勝手につながる世界が来るかもしれない」――。このように語るのは、国際電気通信連合(ITU:International Telecommunication Union)の電気通信標準化局長の候補として日本政府が擁立した、NTT CS…
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真の5G「SA方式」の不都合な真実、当初遅くなるのはドコモだけ?
真の「5G(第5世代移動通信システム)」といわれるSA(Stand Alone)方式がいよいよ日本でも本格的に始まった。だが物事には表と裏があるのが常。進化した5GであるはずのSA方式が当初、現行のNSA方式と比べて、通信速度がどうしても劣化してしまうという「不都合な真実」がある。
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ローカル5Gビジネスにも進出、AWSはどこまで携帯網を飲み込む?
携帯電話ネットワークを次々に侵食する米Amazon Web Services(アマゾン・ウェブ・サービス、AWS)から、またしても注目のサービスが登場した。2021年11月30日(米国時間)に同社のイベント「AWS re:Invent 2021」にて発表した「AWS Private 5G」がそれだ…
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「人手では限界」KDDIが5年かけ運用自動化、匠の技をシステムに
今やネットワークは、我々の社会や生活を支える必要不可欠な基盤だ。同時にネットワークの運用は、サービスが多様化することでどんどん複雑化している。このような背景を受けてKDDIは、ネットワークの運用を自動化するシステムを開発。2021年度から運用を開始した。5年以上の歳月をかけてネットワーク運用者の「…
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ソフトバンクが唐突に5G「SA」を開始した訳、勝負に向け先手か
「まさかこんな形で始まるとは」――。筆者はソフトバンクが2021年10月19日、国内初となる5G(第5世代移動通信システム) SA(Stand Alone)方式の商用サービスを開始したことを受けて、こんな感想を抱いた。
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5G固執で落ちた罠、ドコモ・ソフトバンクらが「パケ止まり」対策
「5Gにつながっているけどなぜ止まる?」「5Gかえって邪魔なんだけど」――。2021年春ころから、SNS上にこんな声があふれ出した。5Gにつながっているのにパケット通信が止まったりする現象、いわゆる「パケ止まり」だ。パケ止まりは携帯電話の世代をまたぐエリア拡大期にはどうしても発生する各社共通の課題…
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NTTがIOWN構想の運命託す「異分子」、元富士通副社長の挑戦
2040年度までにカーボンニュートラル(脱炭素)を実現する新たな目標を発表したNTTグループ。その実現の鍵を握るのが、同社が25年ころから段階的な導入を目指す、次世代情報通信基盤構想「IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)」だ。そんなIOWN成否…
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O-RANに暗雲、ノキアが米中リスク背景に業界団体の作業を中断
飛ぶ鳥を落とす勢いの基地局オープン化の動きに暗雲が漂い始めた。フィンランドの通信機器大手Nokia(ノキア)が、基地局オープン化の仕様をつくる業界団体「O-RAN ALLIANCE」における技術作業を中断したことがわかった。O-RAN ALLIANCEには、米国が国家安全保障上の懸念があるとする「…
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楽天携帯正念場、かさむローミング費 獲得アクセル踏み込めず
楽天グループ(以下、楽天)が正念場を迎えている。2021年8月11日に発表した2021年1~6月期の連結決算(国際会計基準)は最終損益が654億円の赤字だった。携帯電話事業の設備投資が重荷になり、赤字幅は前年同期から拡大起死回生に向け同社は同年8月4日、ドイツの新興通信事業者に対して自社開発した仮…
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NTT「宇宙データセンター」の勝算、人類史上初 IOWN強みに
NTTが人類史上初という「宇宙データセンター」の実現に向けて動きだした。スカパーJSATホールディングスと組み、2026年にも人工衛星上でコンピューティング・ネットワーク機能を提供開始する。これまでも世界において宇宙データセンターの構想自体はあったものの、人工衛星自体の限られた計算能力や経済合理性…
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ノキアとダイムラーが特許紛争で電撃和解した訳 日本へ影響必至
「つながるクルマ」に必須となる通信特許を巡り訴訟合戦になっていたフィンランド通信機器大手のNokia(ノキア)と独Daimler(ダイムラー)が2021年6月1日、電撃和解した。ダイムラーはノキアの持つ通信特許に対して特許料を支払うことに合意し、互いの訴訟案件を取り下げる。和解とはいえ、実際はノキ…
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もはや勝負あり? KDDIや米ベライゾンがAWS活用にかじを切る理由
KDDIや米Verizon Communications(ベライゾン・コミュニケーションズ)、スペインTelefonica(テレフォニカ)、そして米国の楽天モバイルとも言うべき第4の携帯電話事業者であるDish Network(ディッシュ・ネットワーク)――。世界の通信事業者が続々と米Amazon…
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悪夢再びEricssonやNokiaが出展断念、暗雲漂うMWC21バルセロナ
スペイン・バルセロナで2021年6月末開催予定の世界最大級のモバイル関連の展示会「MWC21バルセロナ」に暗雲が漂っている。新型コロナウイルス感染拡大で開催中止を余儀なくされた20年に続き、スウェーデンのEricsson(エリクソン)やフィンランドのNokia(ノキア)といった大手通信機器ベンダー…
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楽天プラチナバンド再配分の波紋、電波利権を越えた有効活用を
楽天モバイルが総務省の有識者会議で要望しているプラチナバンドの再分配が、業界を越えた波紋を呼んでいる。NTTドコモなど大手3社に割り当てられた帯域の一部の再配分を要望するという前代未聞の事態に大手3社は反発。「他の無線システムを利用している周波数も対象に議論すべきだ」(NTTドコモ)とし、同帯域を…
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Open RANをいいとこ取り、巨人エリクソンの横綱相撲再来か
オープン仕様に基づいてさまざまなベンダーの基地局を自由に組み合わせられるようにする「Open RAN」の勢いが増している。米調査会社のABIリサーチも2020年10月、Open RANに対応した無線機(RU:Radio Unit)の市場シェアが2030年に75%に達するという強気のリポートを発表。…