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 前回に続いて、ハイレゾ論争について考察する。前回は、ハイパーソニック・エフェクトについて紹介し、高周波がもたらす生理学的な現象については確認されているものの、その現象と人が「良い音」と感じるメカニズムについては解明されていないと説明した。今回は、読者の皆さんの考察の参考になるようハイレゾ論争にまつわる話題や疑問点を示したい。

高い量子化ビット数は音の良さに貢献するのか

 ハイレゾの要件には、高い周波数以外に、24〜32ビットという高い量子化ビット数がある。CDが16ビットなので、24ビット音源の場合、256倍の情報量を持つことになる。この情報量の増大が、可聴周波数帯域での標本化の変換精度を高め、結果的に「良い音」になっているという主張がある。2019年10月のコラムにもそのような意見を読者からいただいた。

高い量子化ビット数による情報量の増大が、可聴周波数帯域での標本化の変換精度を高めるのか
高い量子化ビット数による情報量の増大が、可聴周波数帯域での標本化の変換精度を高めるのか
(筆者撮影、以下同じ)
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 だが、これに対して否定派は次のように反論する。前回に説明した標本化定理に基づいた事実として、ナイキスト周波数以下の周波数では、デジタルからアナログに復元した際の波形は、元の信号と完全に一致するというのだ。つまり、16ビットでも24ビットでも、再現された可聴域の波形に差が出ることはないとする。2019年10月のコラムでご紹介した、音声圧縮フォーマット「Vorbis」の開発者であるクリストファー・“モンティー”・モンゴメリー氏の書いた「24/192 Music Downloads...and why they make no sense」では、「ディスク容量を消費するだけで無駄」とまで言い切っている。

 そうだろうか。確かに正弦波のようなシンプルな波形であれば、完全に復元できるのかもしれないが、方形波など複雑な波形を含む音源ともなると、量子化ビットによる情報量の多寡が、デジタルからアナログへ変換する際、波形の再現性に関して何らかの鍵を握るのではないか。ただ、この論説についても、否定派は「そのような差異は、ジェットエンジンの爆音の中で時計の秒針が時を刻む音を聞き分けるようなもの」と全否定する。