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 住友生命保険の健康増進型保険「Vitality(バイタリティー)」は「DX型」と位置づけられる保険商品だ。この商品の開発に臨み、同社と関連IT会社であるスミセイ情報システムは、レガシーシステムを担当していたITエンジニアを大量に、しかも短期でDX人材に転換する必要に迫られた。そこで時間・場所の制限なく、かつDX候補人材の日々の行動を変容させる研修体系を編み出した。マイクロラーニングとトークアプリ「Slack」、オンライン会議を組み合わせたものになる。

 住友生命保険と関連IT会社であるスミセイ情報システムが実施しているDX人材研修の中身がどのようなものか、具体的に説明していこう。

 両社は、3種類のアセスメントを使ったDX候補人材の発掘、マインドセット研修、実際のDXプロジェクトによるOJT(職場内訓練)などに取り組んでいる。こうした取り組みにより、DX人材になるための必要な能力は身につけられるという自信を持った。また、マインドセットして日々新しいことを貪欲に吸収することで、新しいビジネスアイデアを考える発想力も身につくことも分かってきた。

 住友生命グループのエンジニアは元来真面目な人が多く、レガシーシステムの開発・保守を品質高く継続的に行う根気を持っているので、新しいことに取り組めば、成長は速いと思っていた。

マインドセット研修で見えた課題

 次の段階として、より多くのレガシーシステム人材をDX人材に早期に育てる必要があった。そこで、前回紹介したマインドセット研修とは別の形の継続的研修を行うことを考えた。

 グループ会社横断の「保険DXプロジェクト」では、アセスメントで候補者を選定し、マインドセット研修をして、評価の高い人をDXプロジェクトに異動を含め参画させ、OJTで新しいものを吸収するような育成をしている。つまり、すでにDX人材としてある程度育った人の元にDX人材の候補を配置して、継続的なOJTを用いて日常的な行動を変えていくのだ。

 ただ、これには問題があった。この方法では多くのDX人材を同時に育てることができない。DXプロジェクトに異動してもらった人材にはOJTで日々の行動を変えるよう働きかけができるが、レガシーシステムを開発・保守している人材にはOJTを実施できないからだ。

 そこで、OJT以外の方法で教育を行う必要があった。一つの方法は、1日コースのマインドセット研修を頻繁に実施すること。しかし、集合研修を行うためにはある程度の広さの場所を確保する必要があり、一度に多くの候補人材を集めて定期的・日常的に研修を行うことは難しい。また、受講者であるエンジニアの時間確保という点でもハードルが高い。現状のシステム開発・保守の仕事を抱えているエンジニアは多忙で、講師側と予定を合わせて時間を確保するのは困難だ。

 このためマインドセット研修の数を増やすことができず、この方法で大量のDX人材を育成することは困難と判断した。そこで、限られた時間の中で、場所の制限や移動を伴わない教育方法で、DX候補人材の日々の行動を変容させるやり方を模索した。たどり着いたのが「マイクロラーニング」である。