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 日経クロステックの独自調査で、受験時に実務経験を偽ったという回答者が19人に及び、回答を寄せた資格保有者394人の4.8%を占めた1級土木施工管理技士。実務経験を偽った理由を選択肢から複数回答で選んでもらうと、「所属する組織の慣習」が7人と最も多く、36.8%を占めた。これに、「経営事項審査など組織評価の向上」「組織や上司の命令」「給与や手当などの増額」がそれぞれ5人(26.3%)で続いた。

1級土木施工管理技士の受験で実務経験を偽ったと回答した人に、虚偽申請をした理由を複数回答で尋ねた結果(資料:日経クロステック)
1級土木施工管理技士の受験で実務経験を偽ったと回答した人に、虚偽申請をした理由を複数回答で尋ねた結果(資料:日経クロステック)
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 この調査は、2020年3月30日から4月6日にかけてインターネットを介して実施。建設関連の主要国家資格について、実務経験の虚偽申請に基づく受験の有無などを尋ねた。調査対象は、総合建設会社、建築設計事務所、建設コンサルタント会社、住宅会社・工務店、国・地方自治体などに勤める日経クロステックの読者だ。回答者数は1301人だった。

 アンケートでは以下のような証言が得られている。「平成の初めの頃は会社の技術者数を増やして経営事項審査の点数を上げるために、ゼネコンも本来の職種とは異なる資格取得を奨励していた。取得すると奨励金をもらえたので、いろいろな資格を取得するのが当たり前だった」(勤務先:専門建設会社、従業員数:11~50人)

 以下のように職種や部署など、証明時に明らかにおかしいと判断できるケースも散見されており、組織の責任は大きい。「営業や事務といった職種でも施工管理技士の資格を取得している」(専門建設会社、101~500人)。「技術研究所の勤務だったが、工事現場での技術支援を実務経験にした」(総合建設会社、1001人以上)

 実務経験を偽って受験している人が周囲にいる実務者からは、組織の姿勢自体に問題があるとみられる告白もあった。「設計には施工の理解が大切という会社の方針で、1級土木施工管理技士の取得が奨励されている。だが、実務経験はほとんどないので、経験を偽らなければ受験できない」(建設コンサルタント会社、51~100人)

 19年末に施工管理技士の不正取得を発表した大和ハウス工業では、資格取得が昇格のスピードに影響するような人事制度を設けていた点が、不正を助長した。工事部門の課長などへの昇格には、1級建築施工管理技士と土木や電気工事をはじめとする他分野の1級施工管理技士の取得を求める旨の通達も出されていた。

 同社は20年4月17日、外部調査委員会による調査報告書とともにこの事実を明らかにした。資格と人事制度を一体にした結果、資格取得が目的化。仕事で必要であるか否かとは別次元の問題に変質させてしまっていたのだ。