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「トヨタ流人づくり 実践編 あなたの悩みに答えます」では、日本メーカーの管理者が抱える悩みに関して、トヨタ自動車流の解決方法を回答します。回答者は、同社で長年生産技術部門の管理者として多数のメンバーを導き、その後、全社を対象とする人材育成業務にも携わった経歴を持つ肌附安明氏。自身の経験はもちろん、優れた管理手腕を発揮した他の管理者の事例を盛り込みながら、トヨタ流のマネジメント方法を紹介します。
悩み

設備機器の開発チームでマネジャーを担当しています。数年前から市場ニーズの変化で主力製品の利益率が徐々に下がっているところに、新型コロナウイルス禍で進んだ勤務形態の変化の影響を受けています。正直に言って、開発チームの士気が下がって困っています。メンバーに直接会う機会も激減しているので余計に心配です。士気を高める方法があるとよいのですが……。

編集部:世界中が新型コロナと戦い続けています。北半球が冬を迎え、再び新型コロナの感染者が増加に転じました。世界には都市封鎖を実施する国もあり、日本では2度目の緊急事態宣言が発令されました。これらが経済活動の制限を招き、企業の業績に負の影響を与える恐れもあります。

 一方で、第5世代移動通信システム(5G)対応スマートフォンやパソコン、ゲーム機、半導体に関連する企業のように新型コロナ禍で変化・増加した需要を捉えたり、一部の自動車メーカーのようにいち早く業績を回復させたりする企業もあります。トヨタ自動車は後者の代表例でしょう。

 このように、新型コロナ禍で好調な企業と厳しい企業とで大きく2つに分かれる状況が続いています。追い込まれ、不安を覚えている社員も少なくないと思います。

肌附氏—日本では今、「医療崩壊」という言葉がメディアで飛び交っています。過大な負担やストレスがかかっている現場で、ギリギリの状態で頑張っている医療関係者の方々には頭が下がる思いです。にもかかわらず、病床使用率が何%だから危機的だといった報道ばかりで、最前線の現場で戦っている医師や看護師の精神的な負担、すなわち「心の限界」についての言及があまりないというのが現実です。

 ある病院では数十人の看護師が一斉に辞めたといいます。報酬面に不満があったのかと思ったのですが、そうではないというのです。看護師は、患者を助けようと取り組んだ日々の頑張りに対し、ねぎらいの言葉を掛けてほしかったと話していました。自分の身を感染リスクにさらしながら患者や国民のために尽くしてくれる看護師に対し、心ない言葉を発する人が中にはいるのです。懸命に働いていても誰からも感謝されないと感じれば、心が折れて職場を去る決断をする人がいても不思議ではありません。

 これは医療業界に限った話ではなく、製造業にも同じことが言えます。厳しい環境にあるときこそ、リーダーである管理者は部下を支えなければなりません。

 トヨタ自動車の管理者は昔から、厳しい現場で頑張っている部下の働きに目を配り、ねぎらいの言葉をかけるのを大切にしてきました。かつて私の上司は皆そうでしたし、そうした上司から学んだ私自身も部下に同じように接したと自負しています。こうした“伝統"が今の新型コロナ禍のようなかつてない厳しい環境下でも、トヨタ自動車にとって業績回復の原動力になっていると感じます。

編集部:確かに、部下が意気消沈して気持ちが仕事から離れてしまうようでは大変です。しかし、部下をねぎらうといっても、簡単そうに見えて実は何をしたらよいかが分からないという管理者もいるのではないでしょうか。そもそも、生産効率の向上やコスト低減、予算といった経営上の数字の達成に日々追われていて、そこまでできないと思う管理者が多いかもしれません。

肌附氏—できることからやればよいのです。大切なのは、管理者が自ら現地に足を運び、現場で働く部下とコミュニケーションをとって、その働きに対してねぎらいや感謝の気持ちを直接伝えることです。「私の働きを、上司はきちんと見てくれている」と部下に思ってもらえれば、それで十分なのです。

 最近思うのは、今の管理者は考えすぎるあまり、腰が重いのではないかという疑問です。まずはやってみる、動いてみる。すると、新たな気づきが得られ、結果的に課題解決や改善に近づくというふうに、もう少し気楽に構えた方がよいのではないでしょうか。

編集部:具体的にはどのように行動したらよいのでしょうか。トヨタ自動車時代に肌附さんが出会った中で、印象に残っている管理者の事例があれば教えてください。