編集部:今回は特別編として、日産自動車の復活の条件について、外部の視点からヒントを探りたいと思います。率直に、今の日産自動車をどう見ていますか。
肌附氏—日産自動車元会長のカルロス・ゴーン氏が司法取引によって逮捕されました。この事件が会社のイメージを大きく損ねたと思います。クルマの販売に与える影響は小さくないはずです。
ゴーン氏個人の罪は外部の人間には分からないので、ここでは是非を論じません。言えることは、過去において日産自動車が窮地になった時にゴーン氏が同社を救ったという事実です。彼がいなければ、今の日産自動車はなかった。恩人といってもよい現職(当時)の会長を、社長が率先して逮捕に追い込むというのは、普通の感覚では考えられません。
それに、ゴーン氏の独裁を許してしまった責任は、社長をはじめ、他の役員にもあるはずです。にもかかわらず、ゴーン氏だけに責任をかぶせて自分たちは責任を取っていないようにも映ります。このことは日産自動車の社員の中にもおかしいと思う人は少なくないはずです。
自動車は高額製品であり、「愛車」という言葉もあります。イメージが良くない会社のクルマを買うのをためらう顧客は結構いるはずです。今の経営者が一からやり直すと考えて真剣に取り組まないと、負のイメージを払拭できないかもしれません。
編集部:日産自動車のクルマづくりについては、これまでどのように見ていましたか。
肌附氏—競合他社を意識し過ぎて、お客様を見ていないのではないかと感じることが多々ありました。他社が新しいクルマを発売すると、それに対抗するクルマを出す。その際に、他社よりも性能が勝っているとことさらに宣伝するといった感じがしていました。私が現役の時は特に、「なぜ競合他社に対抗心をむき出しにするのだろう。それよりもお客様に受け入れてもらう方が大切なのでは?」と不思議に思っていました。
編集部:競合企業があるなら意識するのは当然なのではありませんか。