編集部:2019年にトヨタ自動車がハイブリッド車(HEV)の特許を無償公開したのには驚きました。競争力の源泉をオープンにしてしまって本当に大丈夫なのかと、他社の経営方針ながら心配になりました。普通に考えれば、「虎の子」の特許は独占し続け、利益の最大化を図るところです。トヨタ自動車は他の会社とは異なるユニークな考え方や施策が多くて興味深い会社ですが、この施策に関しては今でも不思議に感じているところがあります。
肌附氏—特許は特許でしかありません。それだけで良い製品が造れるとは限りませんし、少なくとも、トヨタ自動車は特許で稼ごうとは考えていないと思います。やはり、トヨタ自動車は、ものづくりの会社ですから。お客様が望む良いクルマを開発・生産して、初めて会社の価値を世間に認めてもらえる。私自身はそう考えてきましたが、今の経営者も社員も多くが同じ認識をしているはずです。
もちろん、知的財産権は大切です。いくら特許で利益を出そうと考えていないからといって、何でもかんでも無償公開するわけにはいきません。莫大な研究開発費をかけているわけですから、そんなことばかりしていたら赤字になってしまいます。