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 石油化学プラントの計測や制御機器に強い横河電機がデジタルトランスフォーメーション(DX)を加速している。AI(人工知能)などを駆使し、業務プロセス改革や新サービス創出を目指す。将来的にITコストの半分をこうした「攻め」に投じる野心的な目標を掲げる。

 「新型コロナウイルスでDXのトレンドはますます加速するはずだ」。横河電機の舩生幸宏執行役員デジタル戦略本部長兼DXプラットフォームセンター長はこう力を込める。今、製造だけでなく、流通・小売りやサービスなどあらゆる業種の企業がDXの推進を打ち出している。

 横河電機もDXを急ぐ1社だ。同社は2020年度を最終年度とする3カ年の中期経営計画「Transformation 2020」のど真ん中にDXを置いた。AIやデータ解析といった新技術を活用し、既存事業の業務の進め方を見直したり、顧客に対してデジタル技術を使った付加価値の高いサービスを提供したりする青写真を描く。

横河電機は経営戦略のど真ん中にデジタルトランスフォーメーション(DX)を置いた
横河電機は経営戦略のど真ん中にデジタルトランスフォーメーション(DX)を置いた
(出所:横河電機)
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2019年は「守り」のコストが8割

 DX企業への脱皮に向けて、取り組んだのが情報システム部門の改革だ。2018年4月に情報システム本部をデジタル戦略本部に改称。従来はERP(統合基幹業務システム)の運用・保守といった「守り」の業務が中心だったが、AIやデータ解析などの「攻め」にも十分な経営資源を投じる方針を示した。

 2019年時点でITコストのうちの8割を「守り」のERPやITインフラの運用・保守が占め、「攻め」のAI活用やデータ解析などは2割にとどまった。この比率を2023年をめどに半々に持っていく計画だ。舩生執行役員は「DXはアジリティー(敏しょう性)が重要だ。クラウドと(短期間で開発を繰り返す)アジャイル開発を前提にプロジェクトを進めている」と話す。

 経済産業省は2018年に公表した「DXレポート」で、IT予算の8割が既存システムの運用・保守などに消え、新規投資に十分なお金を回せていない日本企業の実情を指摘した。経産省は将来的にIT予算に占める攻めと守りの比率を4対6まで持っていくように提言するが、横河電機が掲げる目標はこの水準を上回る。