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 自動運転レベル3の技術にはまだ、高い信頼を寄せるだけの十分な実績がない。そのため、今回の法整備は技術の進化過程という過渡期を意識したものになった。周辺監視はシステムに任せて携帯電話の使用などを許容する一方で、安全運行義務は運転者に残す。高速道路の同一車線低速走行に限って詳細な基準を規定し実質的に適用領域を限定した。

 レベル3の自動運転中でも、これまでのレベル2以下と同様、運転者に安全運行義務が課される。事故時の物損に対しては、被害者が加害車両の運転者の過失を証明しなければ補償を受けられない。既に前回説明した通りだが、レベル3の自動運転車の利用者から見れば、不利益を被っているように見える。

 では、なぜこのような法整備になったのか―。それは、自動運転レベル3の技術にはまだ、高い信頼を寄せるだけの十分な実績がないためだ。そこで選択したのが運転者に安全運行義務を残しつつ、自動運転レベル3の技術の活用を容認するという“妥協策”である。技術の進化過程という過渡期を意識した法整備と言えそうだ。

 今回と次回は、自動運転レベル3の実用化に向けて法制度にいかに折り合いをつけたのか、日本の法整備と国際基準化の動向を見ていく。