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 自動運転レベル3の解禁が国際的にも近づく中、幾つかの自動車メーカーは、その実用化に向けた取り組みを加速させつつある。意欲的なのは、ドイツ・ダイムラー(Daimler)、同BMW、ホンダ、中国・重慶長安汽車だ。高速道路の渋滞時の同一車線内低速走行から段階的に高度化していく。今回は、DaimlerとBMWの取り組みを紹介する。

 日本での自動運転レベル3の解禁を皮切りに、国際的にも同解禁が近づきつつある注1~3)。これに伴い、自動車メーカーでも自動運転レベル3の実用化に向けた取り組みを加速させつつある()。

注1)国際連合欧州経済委員会(UNECE)傘下の「自動車基準調和世界フォーラム(WP29)」の専門分科会の1つである「GRVA(自動運転専門分科会)」が2020年3月、「自動車線維持システムに関する車両の認可に関わる調和規定」という新たなUN規則の提案書を完成させたことは前々回前回でも紹介した通りだ。既に道路交通法の改正を終えているドイツが後に続く可能性が高い。
注2)中国でも国家標準の整備が進む。中国・重慶長安汽車(Changan Automobile、長安汽車)と中国自動車技術研究センター(China Automotive Technology and Research Center、CATARC)が自動車の自動運転レベル分け(Automobile Automatic Driving Classification)に関する国家標準の策定を主導。同標準が中国・国家自動車標準化技術委員会(National Technical Committee of Auto Standardization、NTCAS)の審査を通過し、2020年内に正式に公布される見込みだ。
注3)明治大学専任教授の中山幸二氏によれば、米国では「ジュネーブ道路交通条約は馬車や内燃機関(ICE)車を前提にしたもの。自動運転は同条約の対象外であり、進めていいもの」との解釈から州ごとに法制化を進めている。
表 主要自動車メーカーの自家用車向け自動運転技術の開発計画・状況
レベル3の自動運転技術の開発では、Daimler、BMW、ホンダ、重慶長安汽車が意欲的。取材、各社の発表、各種報道などを基に日経Automotiveが作成した。
表 主要自動車メーカーの自家用車向け自動運転技術の開発計画・状況
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 代表格が、DaimlerやBMW、ホンダ、中国・重慶長安汽車である。Daimlerとホンダは、高速道路の渋滞時の同一車線内低速走行で所定の条件を満たせばレベル3の自動運転が可能な自家用車の実現を目指す。BMWは、高速道路での車線変更も伴う130km/hまでの走行を対象にレベル3の自動運転の実現を目標とする。ただし同社は、法規制や国際基準の動向に「大きく依存する」(同社)としており、実用化に当たっては同一車線の低速走行に絞ってくる可能性が高いとみられる。Daimlerは2020年代初頭、BMWは2021年にレベル3の自動運転車の市場投入を計画、ホンダは2020年内に同技術の実現を予定する注4)

注4)一部報道では、ホンダは2020年夏、国内向けにセダン「レジェンド」のレベル3の自動運転車を投入する計画と報じている。ただし、ホンダは本記事執筆当時「2020年内にレベル3の技術を実現する」(同社広報部)としていた。翻って2020年5月12日、ホンダ社長の八郷隆弘氏は自動運転レベル3対応車種について、「(2020)年内に発売に結び付けられればいい」と明かした。

 一方、長安汽車は、高速道路に限定するかどうかを明かしていないが、40km/hまでの渋滞時の低速走行において自動運転可能なレベル3の自家用車の量産を2020年内に開始する。自動運転レベル3の量産車第1号になる可能性がある。

 このように、レベル3の自動運転では、まずは高速道路を対象に同一車線内の低速走行に絞って実用化。その後に車線変更を伴うケースや高速走行を含むものへと適用範囲を広げていくという段階的なステップアップが主流となりそうだ。