自動運転レベル3の実用化に向けた自動車メーカーの動向として、前回はドイツ・ダイムラー(Daimler)、同BMWの取り組みを紹介した。今回は、ホンダやトヨタ自動車など他の自動車メーカー、および自動車部品メーカーの動きを見ていく。ホンダは2020年内のレベル3対応技術の実用化を狙う。
前回紹介したように、ドイツ・ダイムラー(Daimler)と同BMWに加えて、自動運転レベル3の実用化に向けて取り組みを意欲的に進めているのがホンダだ。また、自動運転のレベルは未公表だが、自動運転技術の開発に積極的なのがトヨタ自動車である。今回は、ホンダやトヨタを中心にDaimlerおよびBMW以外の自動車メーカーの動きをみていく。加えて、自動車部品メーカーの取り組みも紹介する。
運転交代要請は3段階で実施
レベル3の技術を2020年内に実現するとしているのが、ホンダだ。同社は、Daimlerと同様に、高速道路の渋滞時における同一車線内での低速走行を対象に同技術の開発を進めている。
同社が2019年に開催したプレス向け技術説明会「ホンダミーティング」で明かした情報によると、高速道路の本線上での車線内運転支援(ハンズオフ、車線維持)、高度車線変更支援(ハンズオフ、車線変更)、渋滞時自動運転(ハンズオフ、アイズオフ、テレビの視聴・操作などが可能)といった機能を盛り込む模様だ(図1)。
車線内運転支援・高度車線変更支援では、ハンズオフのまま車線を維持し、目的地に向けて連続的に車線を変更することで、長距離走行でもストレスの軽減が可能になる。一方、レベル3の自動運転に相当するとみられる渋滞時自動運転では、周囲の安全監視から解放され、テレビやDVDの視聴が可能になる上、運転をシステムに任せられる信頼感で心からリラックスできるものを目指しているとみられる。
渋滞時自動運転中の運転者への運転交代要請については、「運転交代要請」「運転交代要請および警報」「緊急停止制御」の3段階で実施する考えとする。視覚・聴覚・触覚で確実に伝達し、運転者が万が一要請に応じない場合は、リスク極小となるように車線内や路肩に車両を自動で停車させる。
視覚(インジケーター)による警告は、運転交代要請から緊急停止制御まで、聴覚による警報は運転交代要請から緊急停止制御まで、触覚(シートベルトの振動)による警報は運転交代要請および警報から緊急停止制御までと、段階に応じて警告・警報の伝達方法を切り替える。緊急停止制御の段階では、車外に向けてもハザードランプやホーンによって注意を促す。
こうした自動運転車両のシステム構成として、同社は前述のホンダミーティングの時点では、次のようなものを想定していた模様だ(図2)。1つが自車位置認識のためのもの。具体的には、バックエンドサーバー、TCU(通信ユニット)、マルチGNSS(Global Navigation Satellite System)アンテナ、地図ECUと高精度地図である。加えて、外界認識のためのセンサーやサブECU。同社では、カメラと5つのレーダーおよびサブECUから成る「レーダーフュージョン」と、カメラと5つのLIDARおよびサブECUから成る「LIDARフュージョン」の2系統のセンサー群を用意し冗長化を図る考えのようだ。
さらに、運転者の状態を検知するためのものも搭載。運転者監視カメラやステアリングホイールの把持センサー、操舵トルクの検知センサーがこれに当たる。
これらに加えて、運転者とのインターフェースとなるセンターディスプレー、ヘッド・アップ・ディスプレー(HUD)、ステアリングインジケーター、全面液晶メーターといったヒューマン・マシン・インターフェース(HMI)、車両の行動計画を立てるメインのECUで構成する。同ECUは、自車位置や周辺車両などの情報を地図に統合し、座標照合と白線補正、障害物の距離と速度の把握を行い、ローカルマップ処理を行い、運転者の状態を考慮した上で最適な目標ラインを選択する。その上で、システム状態をHMI、車両制御の信号を車両制御側に伝える。
冗長化については、ブレーキやEPS(電動パワー・ステアリング・システム)、電源を対象と考えているようだ。電源の冗長化では、DC-DC(直流・直流)変換器とセカンド電池を追加する。