政府は2020年5月4日、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐための「緊急事態宣言」を5月末まで延長すると決めた。大半の場合“即席”で始まったに違いない在宅勤務(テレワーク、リモートワーク)も長期化する。元からSOHO(職住一体)型で働く場合や、徒歩か自転車で通勤できる職住近接型で働く場合でも、外出自粛が求められる現在、いわゆる”巣ごもり”に偏った生活を続けざるを得ない。
不安や不都合、不便が複合的に絡み合う生活をやり過ごすため、普段は意識せずに済んでいたかもしれないメンタル面の自己点検に目を向けたい。家業の建築設計事務所で働いた後に心理学の分野に転身し、現在は田中豪事務所(東京都中央区)の代表を務め、社会保険労務士、産業カウンセラーなどとして企業のメンタルヘルス対策や労務マネジメントのコンサルティングを担う田中豪氏は、次のように語る。
「生活面、仕事面双方に非常に大きな制約を強いられている。建設業界には、ほぼデスクワークで済むものから、ほとんどが現場でなければ成り立たないものまで様々な労働形態がある。外出する後者の方が新型コロナウイルスに感染するリスクは高いかもしれない。しかし、強いストレス下に置かれている点はどちらの環境も変わらない。収束の兆しが明確でない以上、自身によるストレスマネジメントが必要になる」
にわかに強まっているストレスの1つは、在宅勤務で仕事空間と日常の生活空間が干渉する不都合によるものだ。住宅やオフィス、不動産に関わる企業にとっては今後のビジネスの在り方を探るきっかけになるため、働き方の変化に対する調査も進んでいる。
「在宅勤務を余儀なくされている現在は、生産性向上や健康維持のためにテレワークを選ぶ場合とは、かなり違う条件下にある」と、オカムラワークデザイン研究所で主幹研究員を務める池田晃一氏は語る。自社の社員を対象にアンケート調査を実施した結果、その実態が分かった。「特殊な状況ながら、オンライン会議の経験値を上げる機会が増えたり、情報共有の手段が強化されたり、リモートで働くための環境づくりが進んでいる」(同氏)
オカムラの社内調査の結果を見ると、慣れない在宅勤務による「困り事」は幅広く、空間の使い方で対応できそうなものから一時的なものと割り切ってしのぐしかないものまで、課題は複合的に生じている。ストレスの原因を見極め、長期的な視野で働き方を改めるフェーズに遠からず入るに違いない。