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 住宅営業の実務では、新型コロナウイルスの感染症対策で顧客との対面での打ち合わせが制限され、ウェブ会議システムで「リモート化」する会社が急速に増えている。コロナ禍自体は国内のピーク時に比べると現在、1日当たりの感染者数などに落ち着きがみられるが、第2波や第3波の影響を懸念する声も根強い。しかしこうした新たなコミュニケーションツールはコロナ禍が収束したとしても、「新しい生活様式」の一環として、また「働き方改革」の手法の1つとして、今後の実務に定着することは確実とみられる。

 東京都江東区に本社を置くエーゼン大塚建設は、リフォーム事業に力を入れている工務店だ。政府が2020年4月7日に緊急事態宣言を発令後、同社は4月13日から契約前の顧客との打ち合わせを全てウェブ会議に切り替えた。同社の大塚健太郎代表は約1カ月半の実務体験を踏まえて、「顧客と対面の打ち合わせをリモート化する流れは、私たちのような中小事業者にとって有利だ」と言い切る。

エーゼン大塚建設の大塚健太郎代表は約1カ月半の実務体験を踏まえて、「顧客と対面の打ち合わせをウェブ会議化する流れは、私たちのような中小事業者にとって有利だ」と話す(写真:エーゼン大塚建設)
エーゼン大塚建設の大塚健太郎代表は約1カ月半の実務体験を踏まえて、「顧客と対面の打ち合わせをウェブ会議化する流れは、私たちのような中小事業者にとって有利だ」と話す(写真:エーゼン大塚建設)
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 大塚代表がこのように考える理由はいくつかある。例えば、従来の対面による打ち合わせでは、プレゼンテーションなどの“演出”や接客スキルなどで、中小事業者は、競合の大手住宅会社などに比べてどうしても分が悪い面があった。「豪華なモデルハウスや気の利いた“おもてなし”などでは、大手にかなわない。しかしリモート化すれば、コミュニケーション環境の条件は中小事業者でも同じだ」(大塚代表)

 中小事業者ならではの小回りの良さも、ウェブ会議では有利に働く。面識の薄い見込み客などに安心感を持ってもらい、信頼関係を構築するという点では、対面以上に難しい面があるので、相手の知りたい情報や疑問点への回答をいかにスピーディーに返すかが重要になる。「中小事業者は経営者自身の他、設計や施工の責任者クラスが直接、顧客に対応するので、知識が豊富で話に説得力がある。組織の規模が大きいと比較的経験の浅い担当者が応対するケースが少なくない。この点でも、組織が小さいことが強みになる」。大塚代表はこう語る。

エーゼン大塚建設では2020年4月13日から、リフォームの見込み客との打ち合わせを全てウェブ会議に切り替えた。上は、ホームページに設けた専用の問い合わせ窓口画面(資料:エーゼン大塚建設)
エーゼン大塚建設では2020年4月13日から、リフォームの見込み客との打ち合わせを全てウェブ会議に切り替えた。上は、ホームページに設けた専用の問い合わせ窓口画面(資料:エーゼン大塚建設)
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 エーゼン大塚建設では顧客対応のリモート化により、顧客との打ち合わせに要する時間の短縮効果も顕在化している。「従来の対面による顧客対応では、打ち合わせ1回当たりでおおむね3~4時間要していたが、ウェブ会議では、こちらも顧客も話題が必要な要件により集中する傾向があるためか、1回当たり1時間から1時間半程度で済むようになった」と大塚代表は話す。

 さらに興味深い点として、大塚代表の印象では、従来よりも見込み客の初回打ち合わせからクロージング(受注が確定し契約を締結する段階)までの期間の短縮化効果も期待できるという。「対面の打ち合わせでは、相手に情報を一度に詰め込み過ぎると強引な印象を与えてしまうので、あえて情報を小出しにして次回打ち合わせに持ち越すというケースもよくある」(大塚代表)

 大塚代表は、ウェブ会議で相手(顧客)も効率をより重視してコミュニケーションを図る傾向が高いと感じている。「実際、顧客自身が予算などの情報を早い段階で教えてくれるので、それに合わせた提案や見積もりをしやすい。契約まで、対面以上にストレスなく進められる印象がある」。予算や設計の概略など基本的なことを伝えたうえで、あえて他社との比較を勧めて、それ以上は追いかけないのがポイントだ。それによって顧客が本気になり、再度問い合わせてきたときは高い確率で受注できるという。