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インテルの供給不足がAMDの躍進につながった

 ここまで説明してきたRyzenとCore iの位置付けは、デスクトップパソコン向けCPUの場合である。

 ノートパソコン向けCPUの場合、現行Ryzenの基本設計はデスクトップパソコン向けより1つ世代が古い。そのためCore iの最新世代を搭載するノートパソコンと比べると、やや性能が劣る場合がある。

 ほぼ同じ実勢価格のRyzen搭載ノートパソコンとCore i搭載ノートパソコンを、代表的なベンチマークテストで比較したのが下の表だ。

mouse X4-B(Ryzen 5 3500U)mouse X4-i5-E(Core i5-10210U)
CINEBENCH R20CPU13951638
CPU(Single Core)368431
3DMarkTime Spy678437
Fire Strike17431047
PCMark 10Extended(総合)28292644
Essentials72067090
Productivity55936707
Digital Contents Creation31353218
Gaming1371865
主なベンチマークテストの結果を比較した。数字が大きいほうが性能は高い

 「CINEBENCH R20」は純粋なCPU性能を測れるテストであり、CPUの演算機能だけで見ればCore i5搭載モデルのほうがRyzen 5搭載モデルより高性能と言ってよさそうだ。

 しかしCPUが内蔵するグラフィックス機能はRyzenの方が上なので、3D描画性能を検証する3DMarkの結果は、Ryzen搭載モデルの方が優れる。

 また、CPU性能だけではなくグラフィックス性能など総合的な性能を検証する「PCMark 10」は、総合点はRyzen搭載モデルだが、そのほかの項目別テストではCore i搭載モデルが勝っている部分がある。実際のところ、CPU性能だけでパソコン全体の性能の優劣を語るのは非常に難しい。

インテルの「Core i5-10210U」を搭載するマウスコンピューターの「mouse X4-i5-E」
インテルの「Core i5-10210U」を搭載するマウスコンピューターの「mouse X4-i5-E」
(撮影:竹内 亮介)
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 現行モデル同士の比較はいま述べた通りだが、2020年春以降に発売が予定されている次世代のノートパソコン向け「Ryzen 4000 シリーズ モバイル・プロセッサー」は、CPUの基本設計がデスクトップ用と共通になり、性能は飛躍的に向上する。

 デスクトップパソコンと同様、ノートパソコンの分野でもインテルがAMDの後じんを拝することになる可能性は高いだろう。

 そもそもメーカー製パソコンでAMD製CPUが広く採用される要因の1つは、インテルの「供給不足」にある。インテルは製造面のトラブルにより、パソコンメーカーが求める十分な量のCPUを供給できない状況にあった。

AMDのCPUを搭載するパソコンには、ブランドネームの入ったシールが貼られている
AMDのCPUを搭載するパソコンには、ブランドネームの入ったシールが貼られている
(撮影:竹内 亮介)
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 こうした状況の中、長らく互換CPUビジネスを進めるなかで安定性や信頼性を培ってきたAMDが、Ryzenの高い性能と価格の安さを武器に各メーカーで採用例を増やしていった。

 インテルの製造面でのトラブルは、いまだ完全に解決されたとは言えない状況だ。大幅な価格の引き下げなど、インテルが何らかの劇的な対策を採らない限り、今後もAMDとRyzenの躍進は続くものと思われる。

竹内 亮介(たけうち りょうすけ)
毎日コミュニケーションズ、日経ホーム出版社、日経BP社などを経てテクニカルライターとして独立。PC、モバイル、家電などのIT機器の評価記事や解説記事を新聞、専門誌やオンラインメディアに執筆している。