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各界のキーパーソンに新型コロナウイルスの影響や、新しい社会へのヒントを聞く「私たちの『アフターコロナ』」。日立製作所社長兼CEO(最高経営責任者)の東原敏昭氏は「ビフォーコロナの世界には戻らない」と断言する。コロナ後のイノベーションは「人間中心」のテクノロジーから生まれるとし、アフターコロナをその起点にするべきだと説く。

(聞き手は浅川 直輝=日経コンピュータ編集長、山端 宏実=日経クロステック/日経コンピュータ)

東原 敏昭(ひがしはら・としあき)氏
東原 敏昭(ひがしはら・としあき)氏
1977年、徳島大学工学部を卒業し、日立製作所に入社。1990年に米ボストン大学大学院コンピュータサイエンス学科を修了。2007年に執行役常務。日立パワー・ヨーロッパ社プレジデントや日立プラントテクノロジー社長などを経て、2014年に社長兼COO。2016年から現職。1955年生まれの65歳。(写真:北山 宏一、以下同)
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新型コロナウイルスが国内外で猛威を振るっています。

 コロナ危機の下で企業経営者がやらなければいけないことは3つです。1つ目はキャッシュフロー経営です。日立は現金や現金同等物が約7000億円、無担保の普通社債が2000億円、(全額未使用の)コミットメントライン(融資枠)が5000億円あり、総額1兆4000億円の流動性を確保しました。これから見ていくのは、キャッシュフローです。いかにキャッシュフローをポジティブにしていくか。これが重要です。

 我々経営者はビジネスをするうえで、ワーストケースを考えておかなければいけない。では、今のような状況がいつまで続くのか。影響度の大きさという意味で、今回はリーマン・ショックを超えます。経営者として、相当な危機感があります。ワクチンができるまでは事態が進展したり、後退したりを繰り返して、みんなが安心して外を出歩けるような状況になるまで2~3年かかるケースが一番怖い。

 2つ目は徹底した構造改革です。在宅勤務をベースに業務効率を高めていかなければいけません。今回、日立ハイテクを取り込むので、構造改革の観点から日立ハイテクとのシナジー(相乗効果)を引き出す必要もあります。

 日立ハイテクは医療関係や半導体関係の計測機器を手掛けると同時に、実は商社機能も持っています。商社機能は数千億円とかなりのボリュームで、単に(機器を)買うだけではなくて、バリュー(付加価値)を付けて売っています。ここと日立本体の調達部門が一体になれば、構造改革の成果をさらに引き出せます。

 最後の1つは、企業活動と社会との関わりを明確にすることです。我々の取り組みが社会や環境にどのくらい貢献しているのかを明確にすれば、従業員のやる気を一層引き出せます。4月に新型コロナ関連で中小企業の在宅勤務を支援するサービスを発表しましたが、これも自分達が産業界を支えていると認識できる取り組みの1つだと思っています。

新型コロナ関連のアイデアコンテストも開催したそうですね。

 はい。2015年から「Make a Difference!」というアイデアコンテストをやっており、4月20~28日にかけて新型コロナ対策で何ができるのか社員に提案してもらいました。2019年度は募集期間が2カ月半で700件ほどでしたが、今回は期間が短いにもかかわらず、1430件の提案が集まりました。