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セミナー
コロナで炎上、それ本当?~計算社会科学でSNSデマを解き明かす! 6/3 18時

 新型コロナウイルスの感染拡大によって社会のあらゆる分野でデジタル化が加速すると同時に、課題も浮き彫りになった。その1つが個人情報の扱い。「監視社会を避けながら、健康を核としたデータガバナンスを構築できるはずだ」。慶応義塾大学の村井純教授は語る。

(聞き手は外薗祐理子=日経クロステック、インタビューは4月23日にオンラインで実施した)

村井純(むらい・じゅん)・慶応義塾大学教授
村井純(むらい・じゅん)・慶応義塾大学教授
1955年生まれ。慶應義塾大学理工学研究科博士課程修了。88年、インターネット研究コンソーシアムWIDE プロジェクトを立ち上げ、日本におけるインターネットの普及の先頭を走ってきた。2013年、インターネット協会(ISOC)が「インターネットの殿堂」に選出。
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 インターネットの普及が間に合ってよかった――。新型コロナウイルスの大流行で私が抱いた正直な思いです。1988年にインターネットに関する研究プロジェクト「WIDE プロジェクト」を日本で立ち上げました。そこから32年、インターネットを誰もが使える環境を作りたいと思って技術開発や基盤構築に取り組んできました。

 外出自粛が要請される中、多くの人々がインターネットを使って自宅で仕事し、教育や医療サービスを受けています。もしインターネットがなかったら、社会の混乱や経済の停滞は今の比ではなかったでしょう。

 新型コロナの感染拡大によって、あらゆる分野でデジタル化が進みました。とりわけ行政、医療、教育などこれまでデジタル化が進まなかった分野の変革が著しい。初診時からのオンライン診療も(時限的な措置として)認められました。

 一方、デジタル化の様々な課題も浮き彫りになりました。例えば、在宅勤務やオンライン教育の増加による通信量の急増によって、集合住宅でインターネットにつながりにくくなりました。SNS(交流サイト)で有用な情報を入手できるようになった半面、フェイクニュースやデマが拡散しやすくなった問題も未解決のままです。

 医療機関に対するサイバー攻撃は以前から観測されていましたが、新型コロナ禍で増えています。多くは身代金要求型ウイルスの「ランサムウエア」です。感染者の対応に追われる病院はシステムを止めるわけにはいかず攻撃者の要求に応じやすいため、標的とされやすいのです。セキュリティーに一層の備えが要ります。

  アフターコロナの社会はデジタルトランスフォーメーション(DX)がさらに進むでしょう。新型コロナ禍において明らかになったDX のメリットと課題を忘れずに社会へ組み込むことが重要です。データや証拠を基にそれら を検証する準備を今のうちから進める必要があります。

監視社会を避け、個人情報活用を

 新型コロナ感染症対策を進める際に課題となったのが個人情報の扱いです。スマートフォンのBluetooth機能などを使って感染者と至近距離に一定時間一緒にいた人に通知を出す「接触確認アプリ」が日本でも5月下旬以降に実用化する見込みです。

 パンデミックへの有効な対策と期待される一方、政府が全国民の接触履歴を把握する「監視社会」の前触れになるのではないかと懸念する声もあります。

 データを「資産」ととらえ、その管理を計画・管理・執行することを「データガナバンス」と呼びます。データガバナンスのあり方が新型コロナを契機に変わると私は考えています。