全2198文字
PR
セミナー
コロナで炎上、それ本当?~計算社会科学でSNSデマを解き明かす! 6/3 18時

各界のキーパーソンに新型コロナウイルスの影響や、新しい社会へのヒントを聞く「私たちの『アフターコロナ』」。新型コロナによって深刻な需要減に直面する観光産業。星野リゾートは1年~1年半にわたって影響が続くと判断し、「3密回避」という新たな旅行の在り方を模索する。国内観光に注力することで、コロナ後には日本の観光力をさらに強くしたい考えだ。

(聞き手は岡部 一詩=日経FinTech、インタビューは4月16日にオンラインで実施した)

星野リゾート代表の星野佳路氏
[画像のクリックで拡大表示]
星野リゾート代表の星野佳路氏
1960年、長野県軽井沢町生まれ。1983年、慶応義塾大学経済学部卒。米国コーネル大学ホテル経営大学院修士課程修了。1991年、星野温泉(現星野リゾート)社長に就任。所有と運営を一体とする日本の観光産業でいち早く運営特化戦略をとり、運営サービスを提供するビジネスモデルへ転換。(写真:星野リゾート)

 新型コロナウイルスが、旅行業界にとって深刻な需要減少要因であるのは間違いありません。大切なのは、終わりを見据えて計画を立てること。これがないと組織として今やるべきことが見えてこない。

 私たちは、新型コロナのワクチンと治療薬ができるタイミングをゴールに設定しています。従って、1年~1年半のスパンで今回の問題に向き合わなければならない。もしこれが3カ月なら、私も嵐が過ぎ去るのをじっと待つでしょう。しかし1年~1年半という期間は待って耐えるにはちょっと長過ぎる。私たちはニューノーマル(新常態)な市場に適応していかなければなりません。

 今は旅行や観光に関して激しい自粛が求められていますが、段階的に緩和されていくはずです。感染状況の推移によっては自粛が強まる時期もあるかもしれません。この期間を新しい経営環境と捉え、いかに旅行需要に応えていくかを模索しています。

 感染につながらない旅の在り方を確立する。これが大前提です。でなければ、旅行そのものが社会的問題になりかねません。全ての魅力は、この土台の上で磨くべきです。旅館やホテルで言えば、「3密回避」の滞在というのが大きなテーマ。急ピッチで取り組みを進めています。

 旅行需要が大きくシュリンクするなかで、どこよりも速く変化していきたい。ただし、私たちだけではダメなんです。業界全体で「3密回避」のノウハウを素早く蓄積し、少なくとも「国内旅行であれば大丈夫」と示していかなければなりません。

 「3密回避」の滞在は、治療薬やワクチンができた時点で全く意味のないノウハウになります。いわば期間限定の業界標準。だからこそ企業同士で隠しあう必要は全くない。互いの手の内をどんどん出して、学び合えばいいはずです。

「地元観光」を見つめ直したい

 インバウンドが注目を集めがちですが、日本の観光旅行市場全体における割合は約20%(2019年)。実は日本人による国内観光が80%を占めていて、今も強いニーズがあります。内訳は、首都圏および関西圏という大都市圏からが50%以上。残りの約30%がそれ以外で、県内など地元からの観光需要が含まれます。

 最初に需要が戻ってくるのは1時間圏内の地元から来る観光客で、次に大都市圏。インバウンドが復活するのは1年~1年半後になるかもしれません。そこで私は「マイクロツーリズム」と呼んでいますが、1時間圏内の地元観光客を改めて見つめ直したい。需要を喚起することで雇用維持にもつながるし、感染拡大の観点からも理にかなっているはずです。

 さらに、地元の人々による魅力の再発見にもなる。これは、日本の弱さを克服することにつながります。観光力というものは、観光事業者だけが作り上げるものではありません。「我が地域の魅力は何か」というコンセンサスが地元の人々の間で取れていることが、強い観光地であることの一つの証し。ところが日本では、地元の人々が魅力を理解し切れていない実情がありました。

 1年~1年半という期間は、地元の良さを知ってもらう良いきっかけになります。

 インバウンドは必ず成長させなければならない分野。海外からの観光客が戻ってきたとき、以前より日本の観光力がパワフルになれる可能性がある。