新型コロナウイルスは「これまで誰もが当たり前と思ってきたことを問い直すきっかけを与えてくれた」と経済産業省商務・サービスグループ政策統括調整官でありながら、厚生労働省と内閣官房を兼務する江崎禎英氏は語る。今求められる医療とは何かを問い直すことにより、「医療の形そのものが変わる」とアフターコロナの医療サービスの姿を予見する。(インタビューは2020年4月17日に実施した。聞き手は高橋 厚妃=日経クロステック/日経デジタルヘルス)
今回の新型コロナウイルスの発生によって見直しを余儀なくされたものがいくつかあります。例えば医療分野においては、病院に行かなければ医療サービスが受けられないと思われてきたことです。特に、これまで当然のことのように受け止められてきた「3時間待ち3分診療」が、感染症対策の観点から極めて不適切であることは誰もが理解したと思います。
そもそも体の弱ったお年寄りを定期的に通院させ、細菌やウイルスがまん延する待合室に何時間も待たせることは、医学的にも大いに問題があると言わざるを得ません。働く世代や子育て世代にとっても、半日近く仕事を休んで病院に行かなければ医療サービスを受けられない現状は見直す必要があるでしょう。
そうした点を突き詰めていくと、医療従事者の過重労働の問題も、当たり前と思ってきた仕事の仕方を見直すことで改善できるのではないかと考えられます。医療サービスの本質が何で、それを適切に提供する方法が何かを考えることで、医療の形そのものが変わる気がしています。これは規制緩和といった単純な話ではなく、今求められる医療とは何かを改めて問い直すことでもあるのです。