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メンタル面も重視

 アフターコロナにおける医療では、特にメンタル面を重視することが必要だと思います。人間は、「栄養」と「運動」と「メンタル」がバランス良く実現されることで健康が保たれることはいうまでもありません。しかし、従来の医療はあくまで病気を治すことが目的とされ、その結果、医療サービスの基本は、薬や手術によって病気の原因を取り除くことでした。

 これまで、栄養や運動、メンタルといった観点は、生活習慣病や老化などへの対応として、専らヘルスケアの文脈で語られてきました。しかし、今回の新型コロナウイルスに見られるように、感染症であっても免疫力が高い人は重症化し難いという点を考えれば、医療においても患者の免疫力を高めるための取り組みをもっと重視すべきだと思われます。

 アフターコロナにおいて特にメンタル面を強調するのは、健康長寿社会を実現する上で、栄養と運動だけでは十分ではないと思うからです。栄養と運動だけに着目した医療は、言ってみれば動物に対する治療でしかないのです。平均寿命が60歳前後であった頃の医療は、まずは働く動物としての人間の状態を改善するためのものだったかもしれません。人生100年時代においては、より良く生きることが重要であり、それを実現するための医療には、メンタル面についても同じようにウエートを置く必要があると思うのです。

 一例を挙げれば、「笑い」と免疫力に相関があることは以前から知られており、特にがんと戦うNK(ナチュラルキラー)細胞が笑いによって活性化されることは学術的にも証明されています。しかし、病院に行くことは、怖くて、痛くて、苦しくて、緊張することばかりであり、病院で大いに笑ったなどという話は聞いたことがありません。

 もちろん、「病気で苦しんでいる人がいるところで笑うなんて不謹慎」という意識もあるでしょう。しかしそのことで、結果的に健康になるための重要な要素を逃しているのです。これからの医療では、患者を診察し薬を処方して終わるのではなく、患者の生活管理やメンタル面でのサポートにも十分注意を払う必要があると思います。

 他方、そうした医療サービスの全てを医師が担うことは不可能です。他の医療従事者やソーシャルワーカーも含めてチームで対応することが重要です。現在では、様々なITシステムやセンサーを活用して、患者の健康状態を常時把握できる環境は整いつつあります。主としてこうした医療サービスを担う「かかりつけ医」は、来院した患者の病気を治すことだけに注力するのではなく、地域住民の健康の維持管理が基本となり、それに応じた報酬体系を構築することも必要です。

 これからの医療は、単に検査データを見て薬を処方するだけでなく、食事や運動へのアドバイスに加え、もし元気がないなら「ちょっと笑わせてみようか」といった対応が求められるのではないでしょうか。こうした取り組みが浸透すれば、アフターコロナのヘルスケアは、人生100年時代の医療サービスの姿を実現するものになるでしょう。