「デジタル田園都市国家」。アフターコロナに目指す日本の姿を一言で表現すると、こうなるでしょう。
1979年1月、大平正芳首相(当時、故人)は国会施政方針演説で「田園都市国家構想」を発表しました。
「都市の持つ高い生産性、良質な情報と、田園の持つ豊かな自然、潤いのある人間関係とを結合させ、健康でゆとりのある田園都市づくりの構想を進める」というものです。
デジタル化の進展により、今は都市と地方の情報格差はなくなりました。近年、IT企業では地方拠点に異動を希望するエンジニアが多いと聞きます。地方の方が都市よりも広い家に住めますし、通勤時間も短くて済みます。同じ給料で都市より豊かな暮らしを営めるというのがその理由でしょう。
そんな中で新型コロナの大流行が起こりました。情報格差がなくなったのに加え、都市よりも地方の方が感染リスクは低い。緊急事態宣言が出て在宅勤務に切り替わったことで、「何のために毎日満員電車に揺られて通勤していたのか」と改めて考えさせられた都市部在住のビジネスパーソンが多いのではないでしょうか。
デジタル活用でリスク分散
私は自民党のIT政策提言「デジタル・ニッポン2020」を2020年5月中にとりまとめる予定です。6月に閣議決定される政府のIT戦略に、この提言が取り入れられればよいと思っています。提言は新型コロナの大流行に伴う急速な社会のデジタル化を踏まえたものになります。
「逆都市化」が進む社会で経済を成長させ、国民のQOL(生活の質)を上げる日本モデルを構築する。これが主眼の1つです。
通常は経済成長に伴って都市への人口集中が進みますが、今後の日本は都市から地方への人口移動が起こると思います。こうした逆都市化の中でも経済を成長させるカギを握るのがデジタルです。
地震や台風などの災害やパンデミックの際、デジタルを活用することでリスクを減らすことも提言の大きなテーマです。
新型コロナ禍において、様々な形でITが活用されています。例えば、会社や学校に行けない場合に在宅勤務やオンライン教育に切り替える、携帯電話会社が持つ人の動きに関するデータを活用して対策を立てるといったことです。
中央集権型から、デジタルを活用したリスク分散型社会の仕組みに移行しなければなりません。企業はデジタル変革(DX)をさらに推し進める必要があります。DXに対して国は支援を拡充しなければなりません。
働き方改革とDXはセットです。在宅勤務が主流となった場合、労働時間の管理の考え方が変わります。それから本社に大きなオフィスビルは要らなくなりますよね。労働法制など関連する法律の見直しも検討しなければなりません。加えてDXに対する政府の金銭的な支援も必要です。
例えば、基幹業務システムがメインフレームで動いている場合、変化への対応力が低い。より対応力の高いクラウドなどに移行するなら、企業は既存システムの保守と新システムの構築の両方に投資しなくてはならず、負担がかさみます。減税か補助金のような形で支援を検討します。