全2025文字
PR

各界のキーパーソンに新型コロナウイルスの影響や、新しい社会へのヒントを聞く「私たちの『アフターコロナ』」。世界を襲った緊急事態は、「都市構造を再編成するきっかけになる」と語る隈研吾氏。「自由であること」が重視されるようになると説く。(インタビューは4月20日にオンラインで実施した。聞き手は坂本 曜平=日経クロステック/日経アーキテクチュア)

隈 研吾(くま・けんご)氏
隈 研吾(くま・けんご)氏
1954 年生まれ。79 年東京大学大学院修了。90 年隈研吾建築都市設計事務所設立。2009 年東京大学教授に就任。20年4月から東京大学特別教授(写真:山田 愼二)
[画像のクリックで拡大表示]

 コロナ禍で、私たちは不自由な生活を余儀なくされています。しかし、今回の事態は「新たな自由に対するプロセス」と読み替えることができるのではないでしょうか。

 事態が収束した後を予測すると、「自由」であることが重視されるようになると考えます。「誰もが好きな場所で暮らし、好きな場所で働ける」といったことがテーマとなり、都市はこの新たなテーマに従って再編成されるでしょう。

 20世紀の都市は、オフィスや工場といった「大きな箱」をつくって、そこに人を集めて効率よく働かせることを目的とした「大箱都市」と言えます。オフィスの歴史は浅く、その始まりは大きな邸宅の中にしつらえた執務室だといわれています。執務室からスタートしたオフィスの考えが拡大して「都市=オフィス」という考えに変化していきました。

 しかし、社会インフラのIT化が進み、今では都市部に通勤しなくてもテレワークで仕事ができます。今回の事態を受けて、実際に多くの人がテレワークを体験し、そのことを理解したはずです。これにより、「逆大箱化」への動きが加速するでしょう。

 つまり「集まって働く」というワークスタイルが20世紀の「制服」だったとすると、今後は人々が自由に、好きな服を着てもいい時代になるということです。