緊急事態宣言が解除され、第2波を警戒しながらも経済を回していくフェーズに入った。これから私たちが向かう先はどこか。新常態(ニューノーマル)の姿とは。どんな未来が待っているのか。日経クロステックは新刊『アフターコロナ 見えてきた7つのメガトレンド』を本日(2020年6月2日)発売する。有料会員限定で、本書の中でキーパーソンが語ったアフターコロナに向けた金言名句を一挙公開する。経験と知識に裏打ちされたキーパーソンの言葉は、重く厳しいが、ヒントにあふれている。31人が語った、私たちの「アフターコロナ」。
立命館アジア太平洋大学学長
今回のキーワードは、「協調」だと思っています。今の経済状況を客観的に見てみましょう。原油価格が史上初のマイナスになり、世界のGDP成長率が大幅なマイナスになるとの予測もある。リーマン・ショックの比ではない事態になっています。
しかし、日経平均株価は1万8000円~ 1万9000円台で推移しています。おかしいと思いませんか。これは、世界の政府と中央銀行が緊密に連携して動いているからです。米国の中央銀行であるFRB(連邦準備制度理事会)が実質ゼロ金利を打ち出し、日本銀行も欧州中央銀行もすぐに動いた。G20は途上国からの債務の返済猶予を打ち出した。世界が必死になって連携しているんです。
グローバリゼーションを見直そうなんて、とんでもないことです。世界が協調しなければ、危機は乗り越えられない。ペストがルネサンスを生んだように、新型コロナは働き方改革を加速させ、労働生産性を上げる。それが生き方改革につながっていくと私は思っています。
日立製作所社長兼CEO
アフターコロナを見据えたとき、もうビフォーコロナの世界に戻ることはないという前提で考える必要があります。今、在宅でできる仕事と出社が必要な仕事を整理してもらっていますが、在宅をうまく活用した業務プロセスがアフターコロナで確立していくことになります。
イノベーションの在り方も変わります。これからは技術とニーズの追いかけ合いになるんじゃないかな。今までのようなテクノロジーから生まれるイノベーションというより、人々のニーズが次のテクノロジーをつくり上げていくイメージです。アフターコロナのポイントは、人間中心社会です。
そもそも、AI(人工知能)とバイオテクノロジーの世界になると、人間中心にしておかないとおかしなことが起きる。テクノロジーが社会や文化を決めるのではなく、人間がテクノロジーをコントロールできないといけない。技術者倫理の重要性は一層高まるでしょう。アフターコロナは人間のコントロール下でテクノロジーを扱う起点にすべきです。