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各界のキーパーソンに新型コロナウイルスの影響や、新しい社会へのヒントを聞く「私たちの『アフターコロナ』」。ライゾマティクス・アーキテクチャー主宰の齋藤精一氏は「行政制度や産業は『人』を中心に考えられていなかった」と指摘し、今後の街づくりにはヒューマンスケールの考え方が必要だと説く。(インタビューは4月22日にオンラインで実施した。聞き手は坂本 曜平=日経クロステック/日経アーキテクチュア)

齋藤 精一氏(さいとう・せいいち)
齋藤 精一氏(さいとう・せいいち)
2006年株式会社ライゾマティクス設立。16年からライゾマティクス・アーキテクチャー主宰。建築で培ったロジカルな思考を基に、アート・コマーシャルの領域で立体・インタラクティブの作品を多数作り続けている。20年ドバイ万博日本館クリエイティブアドバイザー。25年大阪・関西万博People’s Living Lab促進会議有識者(写真:ライゾマティクス・アーキテクチャー)
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 新型コロナウイルスの感染拡大により、「人間とは何か」という哲学的な思想を突き付けられている気がします。本当の意味でのヒューマンセンタード(人間中心)の時代が到来したのではないでしょうか。ライフスタイルや働くことのなどの概念自体を変えざるを得なくなったというのが今の世の中だと思います。

 これまでの行政制度や産業はどれだけ国力や効率を上げられるかを優先し、人を中心に考えていなかったと言えます。街づくりにおいても、「こういったニーズがあるだろう」「こういうものがあれば便利だろう」とマーケットベースで国やデベロッパーは街をつくってきました。

 しかし、今回の事態を受けて、これからは「シビック(市民)」がより重要視されると考えています。街づくりの考え方も大きく変わっていくでしょう。

 変わると感じたポイントの1つに、飲食店にワインの販売を許可するといった様々な特例措置があります。「世の中の動きがこうだから、制度もこう変えなければいけない」とニーズに順応した動きが生まれたのです。

 このように、これからはニーズベースの街づくりが必要になります。そのためには、街の「解像度」を高くすることが求められます。エリアマネジメントや街の運営を考える際に「住民」という言葉が出てきますが住民のなかには自動車業界で働く人や運搬業で働く人、デザイナーなど様々な人がいます。住民という「群」ではなく「個」を尊重しなければいけません。そのためにもヒューマンスケールの考え方が重要になります。