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 各界のキーパーソンに新型コロナウイルスの影響や、新しい社会へのヒントを聞く「私たちの『アフターコロナ』」。安倍政権の内閣官房参与を務めた京都大学大学院の藤井教授は、「感染症対策を進めるうえでも国土構造の分散化が必要だ」と指摘。ただし、安倍政権の国土強靱化政策は見かけ倒しとみて、危機脱却のかじ取りを別の政権に期待する。(インタビューは2020年4月20日に実施した。聞き手は谷川 博=日経クロステック/日経コンストラクション)

 新型コロナウイルスの撲滅はなかなか難しいのではないでしょうか。感染しても症状が表れない人が少なくない。無症状の人が感染を広めてしまうリスクが常にあります。仮に日本だけで撲滅したとしても、世界中で同時に撲滅しなければ意味がありません。このグローバリズムの下では、1国だけでウイルスの侵入を防ぐことは困難です。

藤井 聡 (ふじい・さとし)氏
藤井 聡 (ふじい・さとし)氏
京都大学大学院教授。1968年生まれ。91年京都大学卒、2006年東京工業大学大学院教授、09年京都大学大学院教授、11年同大レジリエンス研究ユニット長、現在に至る。12年に安倍政権の内閣官房参与に就任。同政権の「国土強靱化政策」の理論的支柱となる。18年に内閣官房参与を退任(写真:生田 将人)
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 収束させるには、ワクチンや治療薬が全世界に行き渡らなければなりません。そうなるまでには相当の期間がかかることを覚悟する必要があります。

 今後の世界は、2つのフェーズで考えるべきです。フェーズ1は、ロックダウン(都市封鎖)のように抑制された状況。フェーズ2は、ウイルスが存在することを前提に、社会や経済の構造を変えていく時期に当たります。

 この2つのフェーズで、10年程度かかるでしょう。その間に、日本経済は大打撃を受ける。欧米諸国も経済が激しく傷つく。世界中で需要が不足するので、コロナによる大恐慌が起こる恐れがあります。危機に立ち向かうには、政府が大規模な財政支出を続けていくしかありません。

 新型コロナによる需要減退で、経済には強烈なデフレ圧力がかかります。それを跳ね返す財政政策が必要です。財政規律をいったん撤廃し、消費税を凍結する。これまで民営化してきた事業も再公営化する。

 日本を含む主要国の間では、1980年代から「小さな政府」を志向する動きが続いています。政府が規制を緩和して、「民間にできることは民間に」との考え方が広まった。その結果、様々な分野で民営化が進みました。

 しかし、コロナは民間事業に打撃を与えます。日本や欧米諸国のように、政府をどんどん小さくしていった国は大きな痛手を負うでしょう。

 経済を支えるには、「小さな政府」から「大きな政府」に転換して、公共事業を拡大する。雇用環境が急速に悪化するので、失業者やその予備軍を公務員として大幅に雇い上げる。

 米国のルーズベルト大統領が世界大恐慌で取り組んだように、「コロナ・ニューディール」ともいうべき政策が必要です。