建設技能者の就労者数は下げ止まりの傾向にあるのに、大工だけ減り続けている。理由は、他の職種に比べて大工の待遇改善が遅れているから―。そう警鐘を鳴らす芝浦工業大学の蟹沢宏剛教授に、大工の待遇改善への道筋を聞いた。(聞き手は、小谷 宏志=日経クロステック/日経ホームビルダー)
新型コロナウイルスの感染拡大に伴う経済活動の停滞は、建設技能者にどんな影響を与えたでしょうか。
蟹沢 私が注目しているのは、建設業界でこれまで必要悪とされてきた「一人親方」の矛盾点が、ここに来て一気に噴出したことです。
現在、国や自治体はコロナ禍で苦しむ事業者に様々な形で経済支援をしていますが、その恩恵に預かることができない一人親方がたくさんいます。表向きは個人事業主であっても、実際には事業者登録をしていない人や確定申告を怠っている人、消費税を納めていない人が少なからずいる。そうした人たちは、今回の事業者給付金の対象からこぼれ落ちてしまっています。
彼らが受け取ることができるのは一律10万円の特別定額給付金だけ。これでは、とても仕事の減少分をカバーできません。現在、国内では少なくとも約60万人の一人親方が存在するとみられます。コロナ禍で彼らの生活は困窮しているはずですが、十分な資金援助を受けられない。これまでの矛盾が表面化した形です。