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新型コロナウイルス対策として2020年春、多く企業が社員を在宅勤務に切り替えた。2016年から在宅勤務インフラの整備を進めてきた三井住友海上火災保険は、社員に在宅勤務の「虎の巻」を公開して、スムーズな実施につなげた。

 「働き方改革の一環で構築してきた在宅勤務関連のインフラを、今回の新型コロナウイルス対策でフル活用した。在宅勤務に取り組むことで出社する社員の割合を2~3割に抑えながら、事業を継続した」。三井住友海上火災保険で在宅勤務を推進している金子智恵人事部企画チーム課長代理はこう話す。

 金子課長代理が話すインフラとは、およそ2万人の社員に配布しているシンクライアントパソコンや、社内拠点の無線LAN、社員同士が円滑にコミュニケーションを取れるようにするWeb会議サービス、ビジネスチャットなどを指す。Web会議サービスは米シスコシステムズの「Cisco Webex Meetings」、ビジネスチャットはワークスモバイルジャパンの「LINE WORKS」を利用している。

 シンクライアントパソコンは一般の社員に加えて、事務や電話応対を担当する契約社員である「スタッフ社員」にも配布している。「育児などのため出社するのは難しくても、在宅であれば仕事ができるという社員やスタッフ社員は少なくない。スタッフ社員も在宅勤務ができるようシンクライアントパソコンを配布している」(金子課長代理)。

 三井住友海上は2016年10月、「多様な社員全員が成長し、活躍できる会社を実現する」といった目標を掲げて働き方改革に着手した。「多様な働き方で社員が成長できる手段の1つとして、オフィス以外で働くテレワークは有効」と判断し、在宅勤務制度を導入した。「2時間は子供のPTA活動に参加する必要があるが、その他の時間は在宅勤務をする」といった柔軟な働き方ができるように1時間単位で休暇を取得できる制度も設けた。さらに在宅勤務がしやすくなる、ITインフラの整備も進めてきた。

新型コロナ対策の在宅勤務は段階的に規模を拡大

 三井住友海上が新型コロナウイルス対策としての在宅勤務を本格化させたのは2020年2月末だ。鉄道の駅などで、テレワークや時差出勤の呼びかけが始まった頃である。こうした動きを受けて三井住友海上も全社に向けて在宅勤務や時差出勤を推奨し始めた。

 2020年3月26日、東京都や埼玉県など1都4県の知事は「新型コロナウイルス感染症に関する知事共同メッセージ」を発表した。この中で、テレワークや時差通勤、在宅勤務などの実施を広く呼びかけた。三井住友海上はこれを踏まえて、対象地域で働く社員の5割が在宅勤務をする施策を始めた。

 さらに2020年4月7日、政府が緊急事態宣言を発令してからは、対象地域で出社する社員の割合を2~3割に抑えることを決定。7~8割の社員が在宅勤務をすることになった。緊急事態宣言の対象地域が全国に広がったときには、全国約2万人の社員に対象を拡大している。

 一連の動きの中で、在宅勤務制度の緩和とITインフラの拡充を進めた。在宅勤務制度については、スタッフ社員が在宅勤務をする際や、週2回を超える在宅勤務をする際に必要だった事前申請をなくして、在宅勤務に取り掛かったり、続けたりしやすくした。

 ITインフラの拡充については、社外から社内ネットワークへの同時接続数を増やした。2020年3月上旬から作業を始めて2020年4月までには、全社員の7~8割が在宅勤務をしても支障なく仕事を進められるようになった。

初心者も在宅勤務をすぐ始められる虎の巻を作成

 2020年4月初めの頃は、在宅勤務に初めて取り組むという社員が少なくなかった。そこで「在宅勤務 効率アップのポイント」という文書ファイルを人事部が作成して、全社に公開した。「これさえあれば在宅勤務をすぐに始められる虎の巻になるように文書ファイルを作成した」と金子課長代理は話す。

2020年4月に三井住友海上火災保険が作成した社内向け文書ファイル「在宅勤務 効率アップのポイント」の一部
2020年4月に三井住友海上火災保険が作成した社内向け文書ファイル「在宅勤務 効率アップのポイント」の一部
(出所:三井住友海上火災保険)
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 この文書ファイルには、「事前準備のチェックリスト」「在宅勤務の心構え」「在宅勤務者の義務と上司の責任」などがまとめられている。

 中でも特徴的なのが「事前準備のチェックリスト」だ。リストには「シンクライアントパソコンを社外に持ち出すための事前の手続き」「Web会議の設定変更」など6項目が並ぶ。「初めて社外から接続する社員でもこれらのチェックリストに沿って準備を進めれば、在宅勤務に必要なIT環境が整うようにした」(金子課長代理)。

 チェックリストの項目の中には、シンクライアントパソコンに関する社内手続きの詳しい手順や、ツールのインストール手順をまとめたイントラネットのWebページやExcelファイルのリンクを埋め込んでいる。社員はこのチェックリストのリンクをクリックすることで、自らイントラネット上を探す手間なく、手続きや手順の詳細をすぐ把握できるようにした。