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 損害保険大手の損害保険ジャパン(損保ジャパン)は新型コロナウイルスの感染拡大を受け、2020年3~4月に約1万5000人規模でテレワーク勤務を始めた。人数が多いだけに「想定外の苦労があった」(IT企画部企画グループの遠山岳志リーダー)。それでも大きな支障はなくテレワーク環境に移行できたのには、「デスクトップ仮想化」を補う様々な工夫があった。

テレワークの実施で社員が少なくなった損保ジャパンのオフィス(出所:損保ジャパン)
テレワークの実施で社員が少なくなった損保ジャパンのオフィス(出所:損保ジャパン)
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 損保ジャパンのテレワークへの取り組みは早く、2012年には全社員を対象にテレワークを制度化していた。それに伴いIT機器も整備を進めていた。例えば営業社員や本社社員の多くのパソコンは6年ほど前から、「デスクトップ仮想化(VDI、Virtual Desktop Infrastructure)」を採用していた。これはサーバー上で各社員用の仮想化したパソコンを稼働し、社員が触る端末には操作画面を転送するという仕組みだ。

 遠山リーダーは「セキュリティー面からパソコンにデータを残さないようにしつつ、外出先や、いざテレワークの際に自宅でも業務ができるようにしていた」と説明する。社員がテレワーク時に自宅に持ち帰る端末は、2019年にハードディスクのない約800グラムの軽量端末に変更していた。テレワークの状況に合わせて持って帰ったり、再び社内に持ち込んだりしやすくなるよう考慮したためだ。

 8年前からテレワークの制度があり、社員も慣れている。端末も日ごろ業務で使っているものを持ち帰ればいい。業務データも仮想デスクトップなので端末には残らない。スムーズに移行は進んだが、1万5000人規模という人数もあり、水面下では大規模ならではの苦労があった。

数千台の携帯電話を急きょ調達

 その最たるものが電話だ。外出のある営業社員にはすでに2016年にiPhoneを配備していたため、それをそのまま使えばいい。しかし、それ以外の社員は社内の電話を使っていたため、通話手段を用意する必要があった。単純計算で数千台が必要だったが、数が数だけに全員分用意するのは難しい。「メールやチャット、ビデオ会議システムがあれば、あまり電話をしなくて済む部署もある。かなり必要な部署に絞り込んだ」(遠山リーダー)。それでも必要数は3000台ほどあった。

 短時間で調達する方法を考えた結果、地震や台風など大規模災害時に使う備蓄の携帯電話を急きょ使うことにした。それでも不足していたため、「本社社員や各拠点の担当者が手分けして携帯販売店に直接調達に走った」(遠山リーダー)。

パソコンの遠隔操作ソフトを新規導入

 解決すべき課題はまだあった。デスクトップ仮想化の端末ではテレワークがしづらい部署が幾つもあったことだ。例えば経理や人事給与、保険金支払いなどを担当する部署はもともと「社内の専用パソコンから操作するのが基本になっている」(遠山リーダー)。セキュリティー上の理由のほか、平時は大画面ディスプレーや大きなキーボードがあったほうが業務効率が高いなどの理由だ。対象となる社員数は数千人規模と決して少なくないことも悩ましい要因だった。

 対策を考えることになったIT企画部では、自宅から接続できて、セキュリティーも担保できる方法を探した。そこで採用したのが以前から検討していたRSUPPORTの「RemoteView」で、2020年3月に一気に導入した。RemoteViewは離れた場所にあるパソコンを手元のパソコンから遠隔操作するソフトだ。対象社員は自宅のパソコンから、社内にある専用パソコンをこのソフトで遠隔操作して使う。