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新型コロナウイルス感染症対策として2020年春、多くの企業が在宅勤務へと切り替えた。そうした中、積水ハウスはこれまで同社が2万台以上のiPadを社員に配布するなどして整えてきたテレワークの環境をコロナ禍でも徹底活用。コミュニケーションが滞るといった課題を3つのITで解決した。

 「社員にはパソコンに加えてiPadも配布し、テレワークできるようにしてきた。新型コロナ対策としてのテレワークでも、社員はこのiPadを使って在宅勤務に取り組んでいる」。こう語るのは積水ハウスの森本泰弘ダイバーシティ推進部課長だ。

在宅勤務をしている積水ハウスの社員
在宅勤務をしている積水ハウスの社員
(出所:積水ハウス)
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 同社が米Apple(アップル)のタブレット端末「iPad」を導入したのは7年前の2013年に遡る。最初にiPadを導入したのは営業部門だった。iPadを使って出先で仕事ができるようになり、営業部門の社員は客先と自宅を直行直帰できるようになった。その後、アフターメンテナンス担当部門など他部門へもiPadの配布が広がった。現在はグループ会社の社員や一部の協力工事店の担当者も利用を始め、同社が使うiPadの台数は実に2万台以上。iPhoneを含めると4万5000台に上る。

 iPadの導入に先立ち、積水ハウスは企画、営業、設計、生産、施工、保守といった一連の業務情報を一元管理する基幹系システムを構築し稼働させた。iPadの導入に伴い、iPadのアプリから基幹系システムのデータを閲覧したり、入力したりできるようにした。

 iPadのアプリは内製だ。積水ハウスのIT部門が自前で開発した。「業務に即して使っていこうとすると市販のアプリでは使い勝手が悪いのでカスタマイズが必要」になるとの理由からだ。業務部門ごとに、それぞれ必要なアプリを開発してきたこともあり、これまでに200種類以上の独自アプリを開発してきた。

 しかもIT部門の担当者が全国の各業務拠点を定期的に訪問するなどして、直接業務担当者に使い勝手などを確認。課題や追加してほしい新機能などの情報を集めて、それらを基にアプリをバージョンアップして利便性を高めていった。こうした取り組みが奏功して、「iPadを持っている社員は全員使っている。社員にとってiPadは業務に欠かせないインフラになっている」(森本課長)。

緊急事態宣言発令中は出社率を7~8割抑制

 積水ハウスは新型コロナ対策として、2020年4~5月の緊急事態宣言発令中は出社率を7~8割減らした。オフィスで働いていた社員の多くはiPadを使って在宅勤務に取り組んだ。

 オフィスのデスクトップパソコンで事務処理を担当してきた社員はiPadを持っていなかったため、新たにiPadを配布。加えて社内の自席にあるパソコンに遠隔で接続できるリモートデスクトップを導入した。「iPadとリモートデスクトップサービスを組み合わせ、自宅から社内のパソコンにアクセスして業務を進められるようにしている」と牧口仁人事部部長は説明する。

 システム面ではこの他、在宅勤務の実施状況を集計しやすくする狙いから、勤怠管理システムの入力画面を改良。在宅勤務をしたかどうかをチェックできる欄を新たに設けたという。

 これまで内製してきたiPadアプリは緊急事態宣言の発令後も引き続き活用している。このうち広く利用されているのが「電子稟議(りんぎ)書」と呼ぶ社内決裁用アプリだ。2018年9月に導入後、対象業務などの範囲を広げて、現在は社内決裁の全てにこのアプリを使っている。ある社員は「iPadに加えてiPhoneでも確認したり承認したりできる。コロナ禍でも出社せずに業務を進められてとても便利だ」と話す。

積水ハウスが内製しているiPad向けアプリのアイコンの例
積水ハウスが内製しているiPad向けアプリのアイコンの例
(出所:積水ハウス)
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 新型コロナ対策として人事制度も一部見直した。2020年2月末、政府から小学校などの臨時休校要請が出たことを受けて、年次有給休暇とは別に有給の特別休暇を設けた。「臨時休校で子供が自宅にいて面倒を見る必要がある、といった理由で在宅勤務ができない社員の休暇を取得しやすくした」(牧口部長)

 妊娠中の社員も在宅勤務が難しい場合、同様に特別休暇を取得できる。この他、通勤時間帯の混雑を避けて時差出勤できるよう始業時間を変更できるスライド勤務制度も見直した。これまでよりも幅広く始業時間をスライドできるようにした。