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新型コロナウイルス感染防止対策として2020年春、多くの企業が社員を在宅勤務に切り替えた。三井化学は2020年夏に開催予定だった東京オリンピック・パラリンピックの交通混雑の回避策として検討していたテレワーク関連施策を前倒しで実施。グループ会社含めて4000人規模で社外から社内ネットワークを利用できるようにするなど多岐にわたる施策を講じた。

 VPN(仮想私設網)装置の増強、ノートパソコンの貸し出し、社外からアクセスできる社内システムの拡大――。テレワーク導入のため、こうした取り組みを進めてきたのが三井化学だ。同社は自動車やヘルスケア、食品分野などで使われる様々な素材や部材を提供している。

 このうち不織布をはじめとするヘルスケアに関する素材・部材製品については、新型コロナウイルス対策に関連するものが少なくない。不織布はマスクの本体に利用されている。この他、マスクが鼻に当たる部分の隙間をなくすノーズクランプ、医療関係者などが現場で身に着ける軽い防護服であるアイソレーションガウン用の不織布などもグループで供給している。

 三井化学がテレワーク勤務制度を導入したのはコロナ禍前の2019年4月のことだった。柔軟な働き方を目指す働き方改革の一環で、生産性の向上やワーク・ライフ・バランスの促進、出社が難しくなった際に事業を継続していくBCP(事業継続計画)の一環などの目的で導入した。現場で業務を進める必要がある工場担当者も可能な範囲でテレワークに取り組めるようにしている。

新型コロナウイルス対策として在宅勤務に取り組む三井化学の社員。バランスボールによる体幹トレーニングをしながら執務をする工夫なども出てきている
新型コロナウイルス対策として在宅勤務に取り組む三井化学の社員。バランスボールによる体幹トレーニングをしながら執務をする工夫なども出てきている
(出所:三井化学)
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 テレワーク勤務制度の導入に当たっては「1年以上前からトライアルをして、モバイル環境で業務を円滑に進められるかどうか、テレワーク環境下で上司が部下をマネジメントできるかどうかを見極めた」と三井化学の片寄雄介人事部企画グループ制度企画チームリーダーは振り返る。

 モバイル環境で業務を円滑に進められるかどうかについては、社外からVPN経由で社内の基幹系システムにアクセスできるようにしたところ、問題なく業務が進められると分かった。一方、上司による部下のマネジメントについては、テレワークをする部下が増えると、上司が部下に対して仕事の進捗などを確認するといった負担が増えそうなことが見えてきた。

 そこでマネジメントについては、「テレワーク中の部下から音沙汰がない」といった状況にならないようなルールを設けた。業務の開始時、その日に取り組む仕事の報告や仕事を進めていくうえでの連絡・相談および業務終了時の成果について、テレワークをする部下である社員が上司に対して主体的に報告する。こうすることでテレワークをする社員が増えても、上司が多くの部下とやりとりしてそれぞれ状況を確かめるといった負担をなくした。

2020年2月からコロナ対策のテレワークを開始

 新型コロナウイルス対策としてのテレワーク施策は2020年2月下旬から始めた。ちょうど三井化学の本社がある東京・汐留地区で、在宅勤務を拡大させる企業が出始めた時期だ。

 テレワーク勤務制度では、週当たり2日まで、月当たり8日までというテレワークの実施上限を設けていたが、新型コロナウイルスの感染リスクが高まっているとみて、上限を外した。2020年3月に入ると、本社で働く1300人ほどの社員は原則テレワークをすることを決定。4月からは研究所や工場でも可能な範囲でテレワークに取り組むようにした。

 新入社員や部署を異動した社員については、仕事に慣れるまではテレワークの実施を見合わせていた。1人で仕事に取り組むことになるテレワークで成果を出すには、担当する仕事を自律的に進めるスキルが求められるからだ。しかし、コロナ禍を機にこうした社員もテレワークができるようにした。派遣社員もテレワークを可能にした。

 新入社員などに向けては集合研修が難しいこともあり、eラーニングや外部講師によるオンライン研修に切り替えた。他にも社内で利用してきた米Microsoft(マイクロソフト)の統合コミュニケーションサービス「Skype for Business」などを使って、OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)を実施したり、中途採用者に向けて、部署の仕事を進めるうえで必要なルールなどをまとめた資料データを送って勉強してもらったりする工夫を凝らしたという。

 2020年3月の臨時休校によって、自宅にいる子供の世話をする必要から在宅勤務が難しいといった社員も出てきた。この場合は勤務を特例として免除することにした。移動の自粛が求められている状況を踏まえて、結婚休暇や忌引休暇は、移動の自粛が緩和されるなどしてから取得できるようにもしている。帰宅が難しい状況になった単身赴任の社員に向けては帰宅費用を前倒しで支給して、移動ができるようになってから使ってもらえるようにした。