アフラック生命保険は2020年2月、全社的にテレワークを開始した。社員約5000人が円滑に在宅勤務できるよう、ツール活用を推進したり研修を提供したりして支援している。Web会議などの普及に加えて、ここ数年続けてきた「アジャイル型の働き方」が在宅でもできるようにツールの整備や活用を進めている。後編では、プロジェクトメンバーがテレワークでも作業を進められるようになったアジャイル可視化支援のための独自ツールや手法について説明する。
アフラックは2019年から、2週間といった短期間で仕事の成果を繰り返し出していくアジャイル型の働き方を、業務部門を対象に普及させてきた。業務改革や保険商品の開発などテーマごとにアジャイルチームを立ち上げて運営している。2020年春以降、こうしたチームも基本的にメンバーが在宅勤務をすることになったため、仕事を円滑に進めていくためのデジタル化を進めている。
これまでの働き方に課題、アジャイル型を採用
アフラックがアジャイル型の働き方を採り入れるようになったのは、「ある部門が計画を立てて、関係する他部門と調整したうえで計画を確定。その計画に沿って仕事を進めていく」というこれまで主流だった働き方に課題が見えてきたからだ。部門間の調整に時間がかかったり、取り組み内容が変更になると大きな手戻りが発生したりするというものだ。
そこで関係する部門の代表者が集まってチームを作り、綿密にコミュニケーションを取りながらこまめに調整ができるようアジャイル型の働き方を業務現場に採り入れることにした。短期間で繰り返し成果を出していくようにすることで大きな手戻りを防ぐ狙いもある。アジャイル型のプロジェクトチームは社内に50以上あり、数百人の社員が参画している。
2020年春以前、アジャイル型のプロジェクトでは、専用スペースにホワイトボードを設置し、取り組むタスクを付箋などに書き出して貼り付けることで進捗を管理していた。2020年春以降は、メンバーが在宅勤務へ移行するのに合わせて、進捗管理などをデジタル化していった。
一般に在宅勤務を含めたテレワークで、部署やチームの仕事を進めていこうとすると、「どのメンバーがどんなタスクをどの程度進めているのかが分からない」「コミュニケーションの機会が減ってチームの生産性が下がる」といった課題に陥りがちになる。しかし「在宅勤務になってもプロジェクトを進められるようにしたことで、アジャイル型の働き方はコロナ禍でも強力だと分かった」とアジャイル推進室の伊藤道博室長は話す。
進捗を可視化する支援ツールを独自開発
各メンバーのタスクの進捗状況を可視化するため、アジャイル活動支援ツール「AgileNow」を独自開発した。AgileNowのタスク管理画面には「準備完了」「作業中」「完了」の列が設けられている。メンバーは担当するタスクの進捗状況に合わせて、タスクを示す「カード」を該当する列に配置することで、タスクの進み具合を可視化できるようにした。
プロジェクトでは、実現すべき要件である「プロダクトバックログ」が複数あったり、1つのプロダクトバックログを実現するため複数のタスクに分けて管理したりすることが多い。そこで「どのタスクがどのプロダクトバックログのものなのか、一目で分かるようにAgileNowの画面レイアウトを工夫している」とアジャイル推進室の犬伏啓太課長代理は話す。
プロジェクト全体の進捗状況もAgileNowで把握できるようにしている。カードの配置を踏まえて、完了したタスクがどの程度あるのかを示す時系列グラフ「バーンダウンチャート」の自動作成機能も備えている。「付箋を使っていたときはメンバーが手作業で作成していたが、AgileNowで自動化したことで進捗状況を一目で可視化できるようになった。あるメンバーのタスクの進捗が滞っていることがすぐに分かり、別のメンバーが支援する動きも出てきている」(伊藤室長)