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 国内の稲作農地の5%で、クボタのIoTコンバインが導入されている。農家は収穫した米をセンサーで測定し、乾燥工程や翌年の施肥に生かす。導入から3年で米の収穫量を15%増やした農家もある。

 とある水田でコンバインが黄金色に実った稲穂を端から刈り取り脱穀していく。毎年秋に全国で見られる光景だが、普通ではない点が1つある。コンバインはIoT(インターネット・オブ・シングズ)センサーを備え、収穫した米のタンパク質含有率や水分量などを測定。これらのデータを駆使して新しい農業を実現している。

 このコンバインを作ったのはクボタだ。同社はデータに基づく営農支援サービス「KSAS」を提供しており、コンバインはその一部である。

図 クボタの営農支援サービス「KSAS」の主要な機能
図 クボタの営農支援サービス「KSAS」の主要な機能
栽培と収穫の農作業を支援(写真提供:クボタ)
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稲作農地の5%がKSAS管理

 KSASの営農支援サービスの契約者は2020年2月末で2000件を超え、管理する農場の総面積は8万2000ヘクタールに達したという。「国内の稲の作付面積が約150万ヘクタールなので、その5%ほどをKSASで管理している計算だ」(クボタで研究開発本部のトップを務める佐々木真治専務執行役員)

 KSASのコンバインは米を収穫しながら内蔵センサーを使い、農場の単位面積当たりの収穫量、食味に直結するタンパク質含有率や水分量を測定する。これらのデータをあぜ道で仕切った農場の区画ごとにクラウドで解析し、結果を米の乾燥工程で活用する。タンパク質含有率が近い米を同じ乾燥機に投入して食味のよい米を高く販売したり、水分量に応じて乾燥機を分け乾燥時間短縮やコスト削減を図ったりする。

 データは翌年の田植えにも使う。タンパク質含有率が低かった農場では肥料を多く、高かった農場では少なくする。タンパク質含有率は高くても低くても食味が悪くなる。そこで施肥量を調整し、タンパク質含有率を適切な範囲に収める。

 KSASを3年間使用した農家のモニターテストでは、米の収穫量が1ヘクタール当たり5.1トンから5.9トンへと15%増えた。一方、タンパク質含有率は適切とされる5.5~6.5%の範囲に収まった。「KSASによって仮説検証のサイクルを回し、もうかる農業につなげられることを確認できた」。佐々木専務はKSASの成果をこう語る。

 同社は今後1~2年をめどにしたKSASの「ステップ2」として機能強化を進めている。これまでは収穫量や食味をあぜ道で仕切った区画ごとに管理していたが、5メートル四方のメッシュで細分化するのが柱だ。

 例えば施肥機能を備えた田植え機によって、苗を植えながらメッシュごとに施肥量を調整し、生育のばらつきを抑える。農薬は害虫や病気が発生しているメッシュだけにドローンで散布する。こうしたきめ細かな管理を、人手をかけずに実施する。

 さらにステップ2の一環で、農場の水位や水温を測定して自動で給排水するシステムの試験販売も始めている。

 5年ほど先を見据えた「ステップ3」も計画している。産官学連携の農業データ基盤「WAGRI」などから得たビッグデータを解析する環境を作る。「栽培だけでなく営農計画や販売・会計・帳票のシステムもトータルに提供できる仕組みを整える」(佐々木専務)