アグリテックによる作物の栽培では、人工衛星やIoT(インターネット・オブ・シングズ)、人工知能(AI)、ドローンなどの技術が効果を発揮する。病害虫を探索しピンポイントで農薬を散布するドローンが登場した。害虫や病気のAI診断システムも2021年度に提供が始まる。
ドローンで病害虫を探索、ピンポイントに農薬散布
オプティム
農薬散布の作業は農家の負担が大きい。希釈した農薬を入れたタンクを背負い、農場内に入って散布するのが一般的なスタイルだ。大量に吸い込むと人体に有害な農薬があるうえに、夏場の炎天下で作業を強いられることも多い。そこで急速に普及が進んでいるのが農薬散布ドローンだ。
ドローン大手である中国DJIの日本法人、DJI JAPANの岡田善樹農業ドローン推進部マネージャーによると「当社の農薬散布ドローンを使えば1回の飛行で1.5ヘクタールほどに散布できる。所要時間は1ヘクタール当たり10分ほどと、手作業の数十分の1で済む」という。
ドローンとAIを組み合わせたシステムも登場している。オプティムの「ピンポイント農薬散布・施肥テクノロジー」がその1つである。
カメラを搭載したドローンを飛行させ、空撮した画像をAIで解析。葉についた虫食いの痕を検出し、害虫が発生している農場のエリアを示す。そのデータを基に、農薬散布ドローンによって、害虫のいる付近だけにピンポイントで農薬をまくことができる。
「2ヘクタールの枝豆農家の例では、従来は5~6人で農薬散布をしていたが、ドローンなら操縦者と監視者の2人で可能だ。農薬散布量は1割以下に減った」(オプティムの中坂高士農業事業部サブマネージャー)
同社はシステムの提供方法も工夫している。枝豆や大豆、水稲の農家と契約し、農家の負担額はゼロで同システムを提供。収穫した作物を全量買い取って自社ブランドで販売し、収益の一部を農家に還元するという事業モデルを展開している。
減農薬にしたことで、市場平均の1.5~3倍の小売価格で売れるという。「契約した生産者の利益を従来の1.5倍程度に高められた」と中坂サブマネージャーは胸を張る。