アフラック生命保険は顧客や代理店の営業担当者、社内ユーザーにより良いサービスを提供するためにデジタルイノベーションを進めている。社内ユーザーに向けて、仕事に必要な社内情報を瞬時に探せる検索システムを稼働させた。検索対象は10万件に上る。
取り扱っている保険商品はがん保険だけでなく、医療保険や介護保険へと広がってきている。業務マニュアルをはじめとする社内の資料も増えてきて、仕事に必要な情報を探すのが大変になってきた――。
社員が抱えるこうした課題を解決するためアフラック生命保険は2019年12月、AI(人工知能)を組み込んだ検索システム「あひるーぺ」を稼働させた。検索対象が電子化された業務マニュアルということもあり「AI検索付き電子マニュアル」という別名を持つシステムだ。
施策 | 概要 |
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AIスピーカー | アプリやシステムを音声で操作できるようにする音声認識・応答システム。社内ヘルプデスクなどで活用を進めている |
社内研修のデジタル化 | 離れた拠点の見学にVRを活用したり、分身ロボットを使って集合研修にリモートで参加できるようにしたりしている |
あひるーぺ | 複数の情報系システムで管理する10万件の業務マニュアルなどの情報を一元的に検索できるAIシステム。「AI検索付き電子マニュアル」とも呼んでいる |
Aflac Agile Base | 本社に設置したアジャイル型の働き方でデジタル関連プロジェクトを進められるようにしたスペース |
ビジュアルIVR | 電話問い合わせの音声ガイダンスの選択肢を顧客が持つスマホの画面に表示する仕組み。オペレーターが顧客に保険の説明をする際、資料を共有する機能なども組み込む |
3Dアバター付き音声チャットボット | 顧客応対向けの音声チャットボット。画面に、3次元で立体的に見えるアバターが表示される |
応対マニュアル自動表示AI | コンタクトセンターのオペレーターに向けたAIシステム。顧客との会話の内容を踏まえて適切な応対マニュアルを自動的に示す |
営業サポートAI | 営業担当者に向けたAIシステム。顧客との会話の内容を踏まえて、説明すべき内容などのアドバイスを自動的に示す |
契約変更業務のデジタル化 | 紙文書を多く扱っていた保険契約の変更業務を、AIを組み込んだOCR、RPA、デジタルワークフローを組み合わせてデジタル化する |
あひるーぺは社員と協力会社の担当者、合わせて約1万5000人が利用している。検索対象はドキュメント管理機能を備える米マイクロソフトのSharePointなど、社内に複数ある情報系システムで管理する10万件の情報だ。稼働して数カ月後には社員の8割が利用するシステムとなり、検索にかける時間を6割減らす成果をもたらした。
豊村健治事務統括部事務品質向上推進課課長によると、創業当初は社員の数が限られていたので、先輩社員が後輩社員に業務の進め方を教えることができていたという。しかし社員数が増え、先輩社員が後輩社員に教えることもままならなくなってきた。特にここ10年は仕事を進めるうえで必要な情報が急激に増えてきたという。
背景には取り扱う保険商品も増えて、業務マニュアルなどの情報が多岐にわたっていることがある。「社員が限られた時間で効率よく仕事をするには、仕事を進めるうえで必要となる業務マニュアルなどの情報を効率よく取得する仕組みが必要だ。そう考えて、あひるーぺを開発した」と豊村課長は説明する。
あひるーぺの特徴は仕事に必要な情報にすぐ当たれるように、検索条件の絞り込み条件を充実させていることだ。社員が所属する業務部門や、情報を管理しているデータベースシステムの名前など様々な条件を設定できるようにした。さらに社員が頻繁に検索する条件はあひるーぺで保存できるようにして、検索条件を入力する手間を省けるようにしている。
検索対象の業務マニュアルは内容が更新されることがある。そこで社員はあひるーぺを使って仕事に必要な業務マニュアルを検索。内容が最新の業務マニュアルをすぐに入手できるようになった。「社員が自身のパソコンにダウンロードした業務マニュアルを使っていたが、最新ではなかったので、業務の手順を間違えた」といったミスもなくせる。
検索結果の一覧画面には、Googleなどの検索エンジンと同じように、検索した情報の内容も一部表示させることで、社員にとってどれか今、必要な情報なのかを見極めやすくしている。「検索結果にSharePointで管理する文書ファイルが含まれる場合、文書ファイルの中身も一部、画面に示すようにしている」と内田文事務統括部事務品質向上推進課主任は説明する。
あひるーぺには、検索対象である10万件分のインデックスデータを持たせておき、検索速度を高める工夫を凝らしている。ただし、検索対象の情報は日々、業務が進んでいくなかで変わっていくことがある。社員が業務に必要な新しい情報を追加したり、修正したりしていくからだ。
そこでアフラックはあひるーぺに、検索対象の情報を自動的に調べるクロール機能や、前回のクロール結果と違う情報があれば差分としてインデックスデータを更新する機能などを加えた。「週1回といった間隔で、インデックスデータが最新の状態になるようにして、社員が的確に素早く情報を検索できるようにした」と下谷健太デリバリーコーディネーション部IT開発プロモーション課主任は話す。