全3380文字
PR
セミナー
コロナで炎上、それ本当?~計算社会科学でSNSデマを解き明かす! 6/3 18時

 新型コロナウイルス感染症対策で政府や自治体によるビッグデータの活用が本格化している。

 内閣官房は「新型コロナウイルス感染症対策」のサイトで、東京主要駅の「人流の減少率」や、北海道や東京都など特定警戒都道府県の人口変動などを日々表示している。ビッグデータを活用して地域住民の行動変化を分析し、Webサイトに掲載する自治体も多い。

 こうしたデータを、自分がよく利用する場所の混雑具合を知るために閲覧している人も多いだろう。ビッグデータは国民や地域住民への広報だけではなく、外出自粛要請などの社会的距離に関する施策の実効性の検証や、クラスター(感染者集団)対策の精度向上にも活用されている。

 2020年5月1日に政府の専門家会議が行動変容を評価するために計算して公表した「接触頻度」は、NTTドコモが提供する統計データ「モバイル空間統計」を用いた。政府は3月31日にIT企業や通信事業者に新型コロナの感染拡大防止に資する統計データの提供を呼びかけた。これらの政府要請に対して、ドコモのほかにヤフーとソフトバンク系のAgoop(アグープ)も応じた。それ以外にも複数の企業が自治体に統計データを無償提供する動きもある。

 各社とも統計データや分析ツール、分析リポートなどを以前から商品化しており、顧客企業は商圏分析やユーザー調査に、政府や自治体は観光振興やまちづくりに活用してきた。今回、各社が政府や自治体に提供している統計データは基本的には既存サービスをベースとしている。一部、通常のサービスで実装していない機能を開発し、ユーザーの許可を改めて得てから新たなデータを取得・統計処理して政府に提供する例もある。

 各社の統計データにはそれぞれ異なる特徴がある。特徴を生かして組み合わせることで、一段と精度の高い分析が可能になるわけだ。現に「複数の統計データを使って、対策に役立てている自治体も多い」とドコモ・インサイトマーケティングの古田泰子エリアマーケティング部副部長は明かす。

位置関連の統計データは「基地局型」と「GPS型」に大別

 位置情報に関する統計データの特徴はデータの取得方法に表れる。具体的には「基地局型」と「GPS(全地球測位システム)型」がある。

新型コロナウイルス対策に活用される各社の統計データ
各社の取材を基に日経クロステックが作成した
企業名統計データ名データ取得方法特徴提供先
Agoopメッシュ型 流動人口データ提携する位置情報アプリを通して同意を得たユーザーからGPS位置情報を取得キャリアによらずGPS位置情報を取得できる。GPS位置情報以外の性別・年齢といった情報は集めない。統計処理により個人は識別できない内閣官房、厚生労働省および自治体。自治体向けに分析ツール「Papilio(パピリオ)」も無償提供
NTTドコモモバイル空間統計 国内人口分布統計(リアルタイム版)基地局のエリアごとに所在する携帯電話の台数と、契約情報から性別・年代などの属性を取得約7800万ユーザーとサンプル数が多い。人口の推計は500メートルメッシュ単位。統計処理により個人は識別できない内閣官房、厚生労働省および自治体。自治体は初回のみ無償提供
KDDIKDDI Location Analyzer
など
au公式アプリを通して同意を得たユーザーからGPS位置情報を取得。契約情報から性別・年代などの属性を取得最小10メートルメッシュ単位でGPS位置情報を取得。道路単位の通行量も推計可能。統計処理により個人は識別できないKDDI Location Analyzerを全都道府県と20政令指定都市に2020年7月31日まで無償提供。内閣官房に統計データの分析結果を提供
ヤフーDS.INSIGHT
など
ヤフーのアプリを通してGPS位置情報を取得。Yahoo検索の履歴も取得。いずれも同意を得たユーザーから取得位置情報と検索情報を組み合わせて、エリアや性別ごとに興味関心を可視化できる。統計処理により個人は識別できないDS.INSIGHTを全都道府県と20政令指定都市に2021年3月31日まで無償提供。内閣官房と厚生労働省に統計データの分析結果を提供

 基地局型の代表例がNTTドコモの統計データだ。同社が提供するモバイル空間統計の「国内人口分布統計リアルタイム版」は、基地局のエリアごとに所在する携帯電話の端末数から500メートルメッシュで、「1時間ごと」と「10分ごと」に人口を推計し、最短で1時間後に提供する。携帯端末が国内約7800万台(法人契約除く)と、サンプル数が多いのが強みだ。

 一方、Agoop、KDDI、ヤフーの位置情報統計データはGPS型だ。スマートフォンのGPSの位置情報を基に個人を特定できない形で統計処理を施している。

 GPS型は、KDDIの「KDDI Location Analyzer」は最小で10メートルメッシュ、Agoopの「メッシュ型人口流動データ」は最小で50メートルメッシュ、ヤフーの「DS.INSIGHT」は最小で125メートルメッシュと、基地局型より狭い面積の単位で分析できるという特徴がある。ただし、サンプル数は基地局型と比べると少ない。ユーザーがGPS機能を搭載したアプリを使い、かつデータの取得にユーザーが同意している必要があるからだ。

 そうしたなか、各社はどうやって基となるデータを集めているのか。Agoopは同社の歩数計アプリ「WalkCoin(アルコイン)」など国内外50~60種類の位置情報アプリからユーザーの許可を得て位置情報データを取得し、個人情報を判別できないようにしたうえで統計処理している。アプリ経由なので、ソフトバンクのユーザー以外からも統計の基となる位置情報データを集めており、そのユーザー数は世界全体で約3000万人という。

 KDDIはKDDI Location Analyzerにおいて、同社が提供するau公式アプリを通じて同意が取れたユーザーのGPS情報を基に統計加工したビッグデータを提供する。同意が取れているユーザーは数百万人だ。

 ヤフーのDS.INSIGHTはポータルサイト「Yahoo! Japan」をはじめとする月間5200万人に上る同社サービスの利用者のうち、ヤフーのアプリを使用中で許可を得られたユーザーに限り、GPSから位置情報を推計し、統計処理している。