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 Web会議の不都合な真実、ハンコと紙文化、VPN渋滞――。ビジネスパーソン3000人にテレワークの課題を聞いたところ、1000人超から不満などの声が集まった。日経BP総研 イノベーションICTラボが実施した「新型コロナ対策テレワーク実態調査」の結果を紹介する特集の第5回は、自由意見について取り上げる。

 調査で自由意見を募ったところ、テレワークに関する様々な不満が寄せられた。まずはWeb会議がらみの声を紹介しよう。Web会議は回線状態によって相手の声が聞き取りにくいことがある。この点について「音声が悪く、聞き取れない場合がある」(流通、営業・販売、派遣社員・契約社員)といった声が目立った。「音質(音飛び・遅延)と画質(遅延)」(製造、研究・開発、主任・係長クラス)を課題として指摘する意見もあった。

 Web会議は動画をやり取りするため、テキスト中心のメールやビジネスチャットよりも通信量がかさむ。米ズーム・ビデオ・コミュニケーションズによると、パソコンを使って1対1のWeb会議に臨む場合は画質にもよるが毎秒600キロビット以上の帯域を確保したい。グループ会議の場合は毎秒800キロビット以上が推奨帯域である。

 自宅でのWeb会議をめぐっては、「Web会議中に話しかけてきて、返事ができないとあとで文句を言われたりする」(製造、マーケティング、部長クラス)との意見があった。小さな子がいる家庭なら「お父さん」「お母さん」と話しかけてくるだろう。親と同居していたら、親切心から「ごはんだよ」などと書斎に声をかけに来るかもしれない。作業部屋を確保できる場合はドアに「会議中」と書いた紙を張り出すなどの工夫をしたい。

VPN渋滞とハンコへの不満

 ITツールへの不満でWeb会議と共に目立ったのは「VPN渋滞」に悩む声だ。多数の社員が一斉にVPN(仮想私設網)に接続することによって、社内システムにつながりにくくなる事態である。「VPNアカウントが足りていない」(製造、研究・開発、一般社員)、「VPNのライセンス数が少ない」(製造、研究・開発、主任・係長クラス)といった不満が複数あった。

 テレワークの阻害要因としてハンコや紙の書類を挙げる人も多かった。テレワークをする際の阻害要因や不便・不安に感じることを複数回答で聞いたところ、押印や決裁、発送など「書類・伝票類を取り扱う業務を対象とできず不便」を選んだ人が32.2%に達した。自由意見には「紙・印鑑を必須とする相手企業および自社業務の存在がネック」(流通、情報システム、課長クラス)、「書籍、参考資料などのデジタル化が済んでいない」(製造、総務、その他)との声があった。

ハンコがテレワークの阻害要因となっている
ハンコがテレワークの阻害要因となっている
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 企業はVPN接続のライセンス数や機器を増やす、ワークフローや伝票レスの仕組みを導入する、などの対策が求められる。当たり前だが、これらの取り組みにはお金がかかる。この予算確保が課題である。テレワークのための投資は売り上げや利益に直結しにくいからだ。緊急事態を想定してお金を投じてこなかった企業においては、そのしわ寄せが現場の社員にいっている。投資の決断をしなかった会社に対する批判の声が多く集まった。例を示そう。

 「会社はそもそもテレワークの導入が必要と考えていないようだ。政府の緊急事態宣言を受けてようやく準備をしようとしているため、自宅待機の指示はするが業務ができない。業務遂行の困難性は感染によるものではなく、組織の準備不足が招いたものである」(情報・通信サービス、営業・販売、主任・係長クラス)。