米国と中国の対立が過熱している。もともと米中貿易摩擦としてくすぶっていたところに、新型コロナウイルス禍が拍車をかけた形だ。今後、経済圏の分離(デカップリング)が進むようなことになれば、両国と密接な関係にある日本の製造業に深刻な影響を及ぼしかねない。この荒波に製造業はどう立ち向かうのか。

米中分離、揺れる製造業
目次
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ファーウェイの勝算、調達網「抜け道」に活路
⽶国の対ファーウェイ制裁のインパクト(後編)
米国による国防を建て前とした中国・華為技術(ファーウェイ)への制裁注1)。この影響を受けてファーウェイは、台湾のファウンドリー(半導体⽣産受託)大手の台湾積体電路製造(TSMC)からASIC(Application Specific Integrated Circuit、特定顧客向けIC)を調達で…
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TSMC“顧客名簿”に見る「ファーウェイ規制」、影響は13億米ドルか
米国の対ファーウェイ制裁のインパクト(前編)
中国・華為技術(ファーウェイ)および傘下の半導体設計会社・海思半導体(ハイシリコン)が、台湾のファウンドリー(半導体生産受託)大手の台湾積体電路製造(TSMC)にウエハー処理を委託できなくなる。TSMCはファーウェイグループにとって第2位の大口顧客。取引停止は、TSMCのグローバル戦略に大きな影響…
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ほんの16億円で巨人DJIに挑む、政府の国産ドローン計画が始動
「端的に言えば、既に導入されている中国製ドローンを置き換えたい。でも、国産で適当なものがないから、米中分離でセキュリティーに対する懸念が高まっているこの機会に開発しようということ。そうすれば産業振興にもつながる」。ある国内ドローンメーカーのトップは、先ごろ動き出した政府主導の開発プロジェクトの狙い…
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ここまで強いかファーウェイ、米中分離が長期化するこれだけの理由
米国と中国の覇権争いで世界が揺れている。米国は、中国が通信や半導体など先端技術の開発を通じて国力をさらに増進することを警戒しており、特に5G(第5世代移動通信システム)で世界をリードする中国・華為技術(ファーウェイ)に対して厳しい視線を向けている。
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米中対立はトヨタFCVに飛び火するか、くすぶる中国への技術移転リスク
通信や半導体を中心に、米中の対立が深刻化している。自動車産業への直接の影響は少ないと見る専門家が多い中、技術移転に関わるリスクがくすぶると考えるのが、東海東京調査センターシニアアナリストの杉浦誠司氏だ。とりわけ気にかけるのが、トヨタ自動車の燃料電池車(FCV)である。米国が、中国への「技術移転」と…
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NTT・NEC提携の狙いは「Open RAN」、日本連合でファーウェイ対抗
NTTとNECが「5G」(第5世代移動通信システム)の基地局開発で手を結ぶ。両社は2020年6月25日、会見を開き、NTTがNECへ約5%出資すると発表した。米中対立の激化によってサプライチェーン(供給網)リスクが顕在化する中、両社はオープンアーキテクチャーを採用した基地局を武器に世界で巻き返しを…
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グーグルらの海底ケーブルが異例の計画変更、米中対立で大動脈分断
米グーグル(Google)や米フェイスブック(Facebook)らが建設していた米国ロサンゼルス−中国香港を結ぶ太平洋横断海底ケーブルが、米中対立の影響で異例の計画変更を余儀なくされた。米政府が中国と直結する海底ケーブルに安全保障上の懸念を示したからだ。
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復活途上の東芝半導体に米中分離の「試練」、供給網に間接リスク浮上
赤字体質から復活途上の東芝のシステムLSI事業がまたも試練に直面している。同社代表執行役社長兼最高経営責任者(CEO)の車谷暢昭氏は、2020年6月5日に開催した経営説明会で同事業について追加の構造改革を検討していることを明らかにした。復活途上の同事業に影を落としているのは「米中分離」だ。
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「米中知財戦争」勃発、デジタル通信が焦点 米国優位はこの10年か
特許の実力分析
「米中知財戦争」ともいうべき主導権争いが、米中の対立が激化する中で起きている。米国が得意とする最先端技術である、医療技術とデジタル通信については安全保障も絡んで問題をさらに複雑にしている。
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米国がファーウェイへの規制を一部緩和、標準化目的の技術開示を容認
米商務省は2020年6月15日、米国企業に対して情報通信分野の標準化活動に限り中国・華為技術(ファーウェイ)との協業を容認する新規則を発表した。5G(第5世代移動通信システム)の標準化活動などにおいて、ファーウェイへの禁輸規制が米国企業競争力強化の妨げになりかねないことから、禁輸規制を一部緩和する…
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ワクチン開発競争 いらだつ米国、実力つける中国
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を契機に、米国と中国の対立が深まっている。その主戦場の1つがワクチン開発だ。製薬業界で、新しい医療用医薬品(先発医薬品=いわゆる新薬)を生み出した経験を持つのは、これまで欧州や米国、日本ばかりだった。
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英国・カナダが脱ファーウェイ、容認から一転 NECらに好機
米国が中国の通信機器大手ファーウェイ(華為技術)への規制強化を発表した2020年5月以降、ファーウェイに対する逆風が世界で強まっている。ファーウェイを容認してきた英国などで一転して排除の声が高まっているからだ。通信機器市場ではファーウェイの置き換えを狙った競争が激しくなってきた。
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米国が迫るもう1つのファーウェイ包囲網、「Open RAN」連合
米商務省が20年5月、ファーウェイを名指しした規制強化方針を公表した10日前、米国主導でもう1つのファーウェイ包囲網が立ち上がった。世界各国の政府関係者に、携帯電話ネットワークを構成する基地局をマルチベンダーで運用できるようにする「Open RAN」導入を促す業界団体「Open RAN Polic…
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ファーウェイは「弾丸で穴だらけの飛行機」、米規制強化に耐えられるか
「弾丸で穴だらけの飛行機のようだ」。米商務省が中国の通信機器大手、ファーウェイ(華為技術)への規制強化を表明した直後の2020年5月18日、中国・深セン市で開かれたアナリスト会合に登壇した同社の郭平(Guo Ping)輪番会長は苦しい表情を浮かべた。
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ソニーが恐れる「米中分離」、踏み絵を迫られたTSMC
ソニーが2020年5月19日に開いた経営方針説明会で、同社代表執行役社長兼最高経営責任者(CEO)の吉田憲一郎氏は「地政学リスク」というフレーズを何度も使った。同氏の言う地政学リスクとは、米国と中国の対立だ。もともと米中貿易摩擦としてくすぶっていた火種が、新型コロナウイルス感染拡大の責任を巡って再…