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 「ファーウェイ(華為技術)は弾丸で穴だらけの飛行機のようだ。過去1年間、穴を最優先で直してきたが、米商務省の新たな規制強化によるビジネスへの影響は大きい」。米商務省が中国の通信機器大手、ファーウェイへの規制強化を表明した直後の2020年5月18日、中国・深セン市で開かれたアナリスト会合に登壇した同社の郭平(Guo Ping)輪番会長は苦しい表情を浮かべた。米国の規制強化は、同社の「不時着リスク」を生むばかりでなく、世界経済の分離(デカップリング)を推し進め、中国の成長に支えられてきた日本の製造業に打撃を与える恐れがある。

ファーウェイの郭平(Guo Ping)輪番会長は、米制裁によって打撃を受けてきた同社を「弾丸で穴だらけの飛行機」に例えた
ファーウェイの郭平(Guo Ping)輪番会長は、米制裁によって打撃を受けてきた同社を「弾丸で穴だらけの飛行機」に例えた
(出所:中国ファーウェイ)

米の狙いは「抜け穴」封じ、TSMCとの取引断つ

 米商務省は20年5月15日、ファーウェイを名指しした規制強化の方針を公表した。19年5月に発動した同社に対する事実上の禁輸措置の「抜け穴」をふさぎ、米国外で製造した半導体であっても米国製の製造装置を使っていれば輸出できないようにする。これまでは米国由来の技術やソフトウエアが25%以下であれば規制の対象外となっていた。

 規制強化を発表したウィルバー・ロス(Wilbur Ross)米商務長官は「米国の輸出管理を弱体化させてきたファーウェイの取り組みを断ち切る。同社のこれまでの行動は責任あるグローバル企業のものとは言えない」とファーウェイを厳しく非難した。

 米国の狙いは、ファーウェイが半導体製造に頼ってきた、台湾の半導体受託生産最大手、台湾積体電路製造(TSMC)との取引を断つことだろう。ファーウェイは近年、傘下の海思半導体(ハイシリコン)を使った半導体の内製化に力を入れてきた。ただし生産についてはTSMCなどのファウンドリー(半導体生産受託)に多くを頼っている。TSMCが米国製の半導体製造装置を使っていれば、今回の規制強化によってファーウェイとの取引ができなくなる。実際、米国が規制強化を発表した直後、「TSMCがファーウェイからの新規受注を停止」と報じられた。

 米国の今回の規制強化は120日間の猶予期間後に実施する。TSMCで生産された半導体は、ファーウェイの主力スマホや基地局製品に使われており、打撃は必至だ。ファーウェイは20年5月18日、米国の新たな規制強化方針に対して「恣意(しい)的で悪質。世界のさらなる分断で利益を得る人は誰もいない。産業、社会全体に大きな悪影響を与える」という声明を発表。米国の方針を批判した。

ファーウェイ成長の柱、コンシューマー事業に大打撃

 米国の強硬姿勢は、米中経済圏の分離を一層推し進める劇薬になりそうだ。今やファーウェイは世界のICT市場で有数の購買力を持つ企業であり、同社の取引先は米国のみならず世界中に広がっているからだ。

 日本の部品メーカーは、ファーウェイの大口取引先だ。19年11月に日本の部品メーカー向けイベントに来日したファーウェイの梁華(Liang Hua)会長は「19年の日本からの調達額は1.1兆円になる」という見通しを示した。同社の日本の取引先とされる企業には、イメージセンサーのソニーや電子部品のパナソニック、村田製作所、太陽誘電など、国内の代表的な製造業がずらりと並ぶ。米制裁強化でファーウェイのスマホの出荷量が落ち込めば、日本の部品メーカーの業績に影響が及ぶことが必至だ。

ファーウェイの2019年12月期の売上高構成比。スマホなどのコンシューマー事業が過半を占め、成長をけん引している(売上高の単位は百万人民元)
ファーウェイの2019年12月期の売上高構成比。スマホなどのコンシューマー事業が過半を占め、成長をけん引している(売上高の単位は百万人民元)
(出所:中国ファーウェイ)