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 「米中知財戦争」ともいうべき主導権争いが、米中の対立が激化する中で起きている。米国が得意とする最先端技術である、医療技術とデジタル通信については安全保障も絡んで問題をさらに複雑にしている。

 米国は、知財保護を中国に対して強く要請する。だが、最近の中国の技術進歩は、特許制度を順守した上で実現していると思われる。米国がこれ以上技術移転に強硬な姿勢をみせることは、最終的に「自分たちに追い付くな」と言っているに等しい。従って、特許制度の中では実現が難しい。また、技術特許を中心とするデジタル通信などの分野では、技術移転を完全に排除することは困難である。

 同様の技術移転問題は、生産拠点を海外に移した多くの先進国企業にも起こり得る。世界経済の平和的発展のために、グローバルな技術移転ルールの取り決めが必要な時期にきている。

特許の実力では米中に依然格差あり

 特許出願件数では既に米国を抜き、中国は知財大国であることを強く印象付けている。中国の特許出願件数の増加は、当初は国による底上げ感があった。国による特許奨励策や大学・研究機関の出願増加が大きく寄与していたからだ。だが、昨今では民間企業の出願が主導して増加を続けている。民間における技術開発が急速に進んでいることがうかがえる(図1)。

図1 特許出願件数(出願人国籍別)
図1 特許出願件数(出願人国籍別)
世界知的所有権機関(WIPO) IP Statistics Data Centerのデータを基に正林国際特許商標事務所が作成。
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 ただし、特許の実力をみると米国と中国との間にはまだ大きな格差がある。その格差は、主に次の3点に表れている。[1]ストック件数、[2]国際的な特許出願、[3]注力する技術分野である。

[1]ストック件数

 現在の力を見る上では、ストックとなる有効特許件数が重要だ。ストック件数でみると、米中の格差は縮まりつつあるとはいえ、まだ大きい(図2)。このまま伸びたとしても追い付くのに10年程度かかるだろう。

図2 有効特許件数
図2 有効特許件数
世界知的所有権機関(WIPO) IP Statistics Data Centerのデータを基に正林国際特許商標事務所が作成。
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[2]国際的な特許出願

 有力な技術を持てば、それを使って自国内にとどまらずグローバルで事業展開を目指すのが一般的だ。特許に規定される発明をグローバルに展開する場合、国際特許出願制度であるPCT出願か、当該国に対する直接出願を行う。そのため、PCT出願件数と、直接出願における出願国を見ることで特許の価値を測れる。

 PCT出願の件数を見ると、米国の件数は中国の4倍以上となっており、国際的な特許出願という点では米国は中国に大きく差を付けている(図3)。

図3 PCT出願件数の推移
図3 PCT出願件数の推移
世界知的所有権機関(WIPO) IP Statistics Data Centerのデータを基に正林国際特許商標事務所が作成。
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