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 赤字体質から復活途上の東芝のシステムLSI事業がまたも試練に直面している。同社代表執行役社長兼最高経営責任者(CEO)の車谷暢昭氏は、2020年6月5日に開催した経営説明会で同事業について追加の構造改革を検討していることを明らかにした。復活途上の同事業に影を落としているのは「米中分離」だ。

 システムLSI事業を含む半導体事業では、19年度(19年4月~20年3月期)に売上高は3430億円、営業利益は300億円を見込んでいた。ところが、システムLSI事業を中心に新型コロナウイルス感染拡大による需要減などもあり、終わってみるとそれぞれ2958億円、13億円と、見込みを大幅に下回った。問題は、「一過性の影響にとどまらない」(車谷氏)ことである。

東芝代表執行役社長兼最高経営責任者(CEO)の車谷暢昭氏(ネット中継された経営説明会の様子を日経クロステックがキャプチャー)
東芝代表執行役社長兼最高経営責任者(CEO)の車谷暢昭氏(ネット中継された経営説明会の様子を日経クロステックがキャプチャー)

 新型コロナの影響は確かに大きい。「クルマの販売は世界で2割減るともいわれている。クルマが2割減ったら、(同社が手掛けるクルマ向け)システムLSIは2割以上減るだろう。想定より回復したとしても9割経済だ。ちょっと固定費を減らしたぐらいでは持たない。身の丈に合った形にしていかなければならない」(車谷氏)

 要因が新型コロナだけなら、一時的な需要減と見ることもできる。しかし、東芝の経営陣はある意味で新型コロナ以上に米中貿易摩擦を懸念している。「米国が強気で中国への規制を進めてきたら、日本企業への影響を考慮しなければならない」(東芝執行役上席常務の加茂正治氏)からだ。米中貿易摩擦による影響の範囲が見極めにくいからこそ、「もう一段の踏み込んだ(構造改革の)検討が必要と判断」(車谷氏)したのだ。

 米中分離で注目されるのは、中国の華為技術(ファーウェイ)が絡む商流である。東芝とファーウェイの関係は、現在は東芝の持ち分法適用会社であるキオクシア(旧東芝メモリ)がNAND型フラッシュメモリーを供給しているぐらいで、システムLSI事業を含めて東芝グループ本体としてのファーウェイとの取引はほとんどないとみられる。

 それでも東芝が米中分離を警戒するのは、既存のサプライチェーンのどこかが崩れれば、それによって同社の事業も影響を受けると考えているからだ。「中国で造られている製品には、米国製部品も使われている。我々の部品は供給を継続できたとしても、(米国製部品の供給が止まるなどの理由で)最終製品が造れないという事態になれば、サプライチェーンの変更で(東芝の)供給が減る」(加茂氏)