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 通信や半導体を中心に、米中の対立が深刻化している。自動車産業への直接の影響は少ないと見る専門家が多い中、技術移転に関わるリスクがくすぶると考えるのが、東海東京調査センターシニアアナリストの杉浦誠司氏だ。とりわけ気にかけるのが、トヨタ自動車の燃料電池車(FCV)である。米国が、中国への「技術移転」とみなすことを懸念する。

トヨタの次期FCV
トヨタの次期FCV
2019年の「東京モーターショー」で披露した次期FCVのコンセプト(撮影:日経クロステック)
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 米中にまたがる部品供給網を大々的に構築する自動車メーカーは少なく、米中対立の影響で自動車を製造できなくなる危険性は低いとされる。一方で杉浦氏は、今後米国が、通信や半導体以外の幅広い領域で「軍事関連」とみなした技術の中国への「移転」に神経をとがらすのではないかと危惧する。

 中でもFCVが矢面に立ちやすいと考えるのは、中国がこれから注力する技術分野である一方、米国にとって「軍事技術の1つに位置付けられる」(杉浦氏)からだ。米国が中国に横やりを入れたくなる技術というわけだ。

 中国の自動車政策で肝いりの「NEV(新エネルギー車)政策」。かねて電気自動車に焦点を当ててきたが、2019年に目玉の1つに浮上したのがFCVである。大型トラックなどをEVにする壁は高いとみて、FCVに白羽の矢を立てたようだ。

 中国のFCV政策の鍵を握るのが、トヨタである。20年6月5日、中国国有の商用車大手など5社と、燃料電池システムの開発に取り組むと発表した。トヨタはFCVの量産化で先行し、技術開発で世界の先頭を走る。事実上、中国国有企業にFCV技術を“移転”するように思える。

 “対価”は、トヨタが得意とするハイブリッド車(HEV)の中国市場における販売拡大だろう。FCVの普及政策の検討と軌を一にするように、NEV政策でHEVを優遇する措置の導入が進む。