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台湾積体電路製造(TSMC)へのインパクトを記した(前編

 米国による国防を建て前とした中国・華為技術(ファーウェイ)への制裁注1)。この影響を受けてファーウェイは、台湾のファウンドリー(半導体⽣産受託)大手の台湾積体電路製造(TSMC)からASIC(Application Specific Integrated Circuit、特定顧客向けIC)を調達できなくなる。サプライチェーンの変革が必至となるファーウェイであるが、同社のスマートフォン(スマホ)事業はさして追い込まれず、むしろ好機に転じる可能性さえある。その理由を解説する。

注1)⽶国商務省産業安全保障局(BIS)は2020年5⽉15⽇、ファーウェイとその関連企業 114社への輸出管理を強化すると表明した。輸出管理ルール「Part736.2 ⼀般禁⽌事項及びその適⽤可否の決定」の「(b)-(3) 指定された技術及びソフトウエアの外国で製造された直接製品(外国で製造された直接製品の規則)」に、新たに(vi) 「エンティティー・リスト(Entity List)掲載者に関連する禁⽌事項の基準」を追加した格好だ。これにより、ファーウェイが米国技術を25%以上含む(認識がある)輸出品は、許可を得ない限り外国製造でも輸出不可になる。

先端ASSPに勝算

 ファーウェイにはASIC以外の選択肢がある。例えば、販売先が多数あるスマホ向けの先端ASSP(Application Specific Standard Product、特定顧客ではなく特定用途に向けたSoC)を選ぶこと。これなら、規制の特例措置の期限を迎えた2020年9月12日以降も、ファーウェイブランドのスマホに採用できるはずだ注2)。その場合、図1のようなサプライチェーンの構築が考えられる。

注2)BISは2020年5月15日の時点で、既にファーウェイなどの設計仕様に基づいて生産を開始している場合で、その完成品の再輸出などを行う際は、5月15日から120日以内、つまり9月11日までは許可を求めないとしている。9月12日以降は、対象製品すべてで許可が必要となる。

図1 中国・華為技術(ファーウェイ)は先端ASSP使用に勝算がある
図1 中国・華為技術(ファーウェイ)は先端ASSP使用に勝算がある
ASSP(Application Specific Standard Product、特定顧客ではなく特定用途に向けたSoC)は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit、特定顧客向けIC)化に向けた機能を備えないものとする。例えば、ASSPビジネスの裏技として、特定顧客に向けた回路ブロックを仕込んでおき、特定顧客だけにその回路を使う方法を教えるというものがあるが、これがない。また、中国EMS/ODM企業が製造するスマートフォンも、出荷時点でファーウェイだけに向けた機能や外観を備えないものとする。なお台湾・聯發科技(メディアテック)の競合、中国・紫光展鋭(UNISOC、旧Spreadtrumおよび旧RDA)は5G対応スマホ用ASSPを量産出荷中。中国・海信集団(ハイセンス)のハイエンド端末「F50」が採用しており、その市販価格は2900人民元(約4.5万円)である。(筆者が作成)
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 このサプライチェーンにおいて、モノの行き先がファーウェイと知り得るのは(4)と(5)の中国商社のみ。この種の中国商社は無数につくれるため、米国BISはファーウェイを排除したくても“もぐら叩きゲーム”のような「エンティティー・リスト(Entity List)」の更新に追い込まれる。

 いくら米国BISが対応を強めても、無数に生まれる商流をリアルタイムに追いかけることは不可能だ。エンティティー・リストは実質的に無効化される可能性が高い。(3)の中国半導体商社に先端ASSPを卸さないよう、米国がアメとムチを台湾・聯發科技(メディアテック)に与えることも考えられるが、あまりに大胆な政策なので実施する可能性は低い。