全4529文字
PR

低温で溶融する汎用プラスチック

 プラスチックの材料名や製品名についている「ポリ」は高分子化合物を意味します。汎用プラスチックのポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)は買い物袋やタンク、バケツなどに使われます。ポリ塩化ビニル(PVC)は塩化ビニル樹脂もしくは略して「塩ビ(えんび)」と呼ばれており、水道パイプや建築資材、手帳のカバーなどに使われています。

 塩ビは一時期、廃棄焼却時に猛毒のダイオキシンが発生すると指摘されましたが、これは材料の問題ではなく、廃棄処分の際の焼却条件が発生原因と判明しています。今では焼却条件がしっかり管理されており、問題ありません。この塩ビは衝撃に強く、クラックが入りにくい特徴もあります。

 生産量がPE、PP、塩ビほどは多くないものの、汎用プラスチックとして名前をよく聞くものにポリスチレン(スチロール樹脂、PS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)などがあります。PSは梱包材に使う発泡スチロールや、プラモデルの材料です。PETは飲み物のペットボトルとしてよく使われ、最近は回収の上で再びPETとして再利用されるようになっています*4。ABSはPSよりも硬く、やや強度の必要な機器や建材、おもちゃなどに使われ、ガラス繊維を混ぜた強化ABSは剛性や耐熱性に優れます。

*4 PETは名称に「ポリエチレン」が含まれるがPEではなく、衣類などの繊維としても使われるポリエステルの一種である。

 汎用プラスチックとしてはアクリル樹脂(正式名ポリメタクリル酸メチル、PMMA)もよく使われます。アクリル樹脂の特徴はその透明性にあります。水族館の大型水槽に使われており、生産設備ではカバーに用いられています。着色も可能で、例えばクリアーブラウンといった半透明色にすると、シックな高級感を得られます。また半透明であることから機密性の高いものがある箇所を隠すこともできるので、第三者の目に触れる工場見学コースの生産設備に有効です。

温度には要注意

 汎用プラスチックは、耐熱温度はそれほど高くありません。例えばPEやPS、アクリル樹脂は70~90℃、塩ビは60~80℃と耐熱温度が低いため、使用する雰囲気温度には注意が必要です。さらに、熱による膨張が大きいことにも要注意です。高い精度で加工しても、温度によって寸法が変化してしまうからです。膨張の度合いは「線膨張係数」で表され、プラスチックの線膨張係数は鉄鋼材料のざっと20倍、つまり温度上昇による伸びが鉄の20倍にもなります。

 したがってプラスチック部品の図面に「±0.02(mm)」といった高い精度の指示があるときは要注意です。工場の室温は、1日の中でもかなり変化します。厳冬期の始業前なら0℃で、暖房が利いてくると25℃前後になり、プラスチック製品ではこの温度差による熱膨張を無視できません。高い精度が必要な場合には、工場内の温度を制御しなければ意味がありません。なお、図面に記載された寸法精度は20℃での保障値なので、検査室の室温は20℃に調整されています*5

*5 ISO(国際標準化機構)の規格「ISO 1」は「製品の幾何特性仕様および検証のための標準基準温度」を20℃と定めている。