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図面のサイズは5種類

 図面のサイズはJIS規格(日本産業規格、2019年に日本工業規格より改称)によりA列に定められています。一番大きな図面サイズはA0で、小さくなるにつれてA1、A2、A3となり、一番小さなサイズは本誌に近いA4になります(図2)。数字が1つ増えるごとに1サイズ小さくなり、面積が半分になります。

図2 図面のサイズ
図2 図面のサイズ
一番大きな図面サイズはA0、一番小さなサイズはA4。(出所:西村 仁)
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 このA列の規格はとても合理的なルールで決まっています。一番大きなA0サイズは長辺1189mm、短辺841mmなので、区切りの悪い寸法に思えますが、1189に841を掛けてみてください。1189×841すなわちA0サイズの面積はちょうど1m2になります。このようにA列サイズは1m2を基準に、縦横比が1:√2になっています。

 どの図面サイズで描くかは、設計者が都度決めています。読みやすさを前提に、扱いやすいようにできるだけ小さいサイズを選択しています。

実物との比率を表す尺度

 図面サイズを選ぶ際には、実物に対して図面をどの大きさで描くかを決めなければなりません。この比率を尺度といいます。

 基本は実物と同じ寸法で描きます。これを「現尺(げんしゃく)」もしくは「原寸(げんすん)」といいます。ただし、小さすぎると分かりにくいので拡大して描く場合や(これを「倍尺」という)、逆にあまりに大きいと図面サイズも大きくなってしまうので縮小して描く場合もあります(これを「縮尺」という)。

 倍尺や縮尺の場合の比率について、JIS規格では推奨という形でそれぞれの尺度を提示しています(図3)。特に2と5の比率はとても使い勝手がよいので、倍尺では2倍、5倍、縮尺では2分の1、5分の1がよく使われます。

図3 JIS規格で推奨する尺度
図3 JIS規格で推奨する尺度
現尺が基本。倍尺は2倍や5倍、縮尺は2分の1や5分の1がよく使われる。(出所:西村 仁)
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 現JIS規格では尺度を「:」で表しますが、実務では「:」ではなく、旧JIS規格の分数表記の「/」で表している図面も多くあります。2倍は「2/1」、5分の1は「1/5」といった表記です。これは分数表記の「/」の方が直感的に分かりやすいためです。

表題欄と訂正欄

 図面には部品の形や大きさを示す図に加えて表題欄を記載します。図面を作成した会社名、図面を管理するための図面番号(略して図番)、部品の名称、尺度、材質などを一括して書く欄です(図4)。表題欄は定められた形式はなく、企業ごとに設定しています。ただし配置する場所は図面サイズを問わず図面の右下になっています。

図4 表題欄の一例
図4 表題欄の一例
会社名、図面番号、名称、尺度、材質などを一括して記載する。(出所:西村 仁)
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 図面にはもう1つ、訂正欄や改訂欄と呼ぶ欄があります。図面が完成したあとに図面内容を変更する場合があります。その際に、変更した内容について訂正欄や改訂欄に履歴を残します(図5)。

図5 訂正欄の一例
図5 訂正欄の一例
変更した内容について履歴を残す。(出所:西村 仁)
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 図面を変更する理由は大きく2つあります。1 つはコストダウンや良品率向上といった前向きな変更で、もう1つは設計時のミスの修正です。変更前の情報は完全に消すのではなく、二重線を引くなどして変更前の情報を残すのが一般的です。この訂正欄は図面の右上や、表題欄の上もしくは左隣に配置されます。

 次回は、寸法表示の読み方について紹介します。