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3つの寸法記入法

 寸法数値の記入には3種の方法があります。同一直線上に配置した寸法線に表示する「直列寸法記入法」、部品の端部などの基準面からの長さを並列に表示する「並列寸法記入法」、基準面からの長さを同一直線上の寸法線で表す「累進寸法記入法」の3種です(図3)。これらの名称を覚える必要はありませんが、違いを理解しておきましょう。

図3 3つの寸法記入法
図3 3つの寸法記入法
直列寸法記入法では各部の長さを示す寸法線(図では「20」と「35」)を同一直線上に配置(「80」は全体の寸法)。並列寸法記入法では基準面から各部までの長さを並列に表示し、累進寸法記入法では基準面からの長さを同一直線上の寸法線で表す。(出所:西村 仁)
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 寸法記入法は、ものの加工や検査の方法に影響を与えます。例えば加工後の検査において、直列寸法記入法の図面では合格でも、並列寸法記入法の図面で検査すると不合格になる場合が生じるのです。並列記入法と累進寸法記入法は、どちらの図面で製作しても、全く同じものができます。この理由の理解には公差の知識が必要となるので、次回以降で公差について説明する際に解説します。

 並列寸法記入法と累進寸法記入法は、描き方が異なるだけで記入される寸法数値は同じになります。両者を比べると、並列寸法記入法は直感的に分かりやすい半面、寸法数値の数が多くなると、寸法線の列数も増えて寸法数値が外形から離れていくため、読みにくくなってしまいます。一方、累積寸法記入法は寸法数値の数が増えても、寸法線を一直線上に伸ばすだけで対応できます。ただし、寸法の向きによっては図3のように寸法数値が横向きに表示されるので、並列寸法記入法に比べると読みにくいのが弱点です*2

*2 JISでは並列寸法記入法と同じように数字を立てて記入する方法も認められているが、隣の数値と接近すると読み間違いのリスクが高まるので、実務では避けている。

 このように一長一短あるので、製図者はどちらが読みやすいかで描き方を決めています。

便利な寸法補助記号

 次に、よく使われている寸法補助記号を紹介します。寸法補助記号を使うと製図作業が楽になり、また図面がシンプルになって読みやすさも改善する一石二鳥の利点があります。

1)半径「R」と直径「∅」

 半径はR(通常のアルファベット同様にアールと呼ぶ)で表示され「R3」は半径3mmを意味します(図4)。

図4 半径を表す「R」
図4 半径を表す「R」
寸法補助記号「R」により半径を表す。(出所:西村 仁)
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 直径は∅(ファイ、マルと呼ぶ)で表されます(図5)。∅記号を用いると、軸形状を一面図で描けるという大きなメリットがあります。図面上で円形を描いている状態で直径を指示する場合には、∅は付けずに直径の寸法数値だけを記入する方法も認められているので、半径と間違えないように注意してください。

図5 直径を表す「∅」
図5 直径を表す「∅」
軸形状を横から見た形状に∅記号を用いると、断面が円形であると示せる。(出所:西村 仁)
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 穴の場合には直径指示の後に深さの指示が入ります。また複数個ある場合には、必要個数が直径指示の前に表示されます。「3×∅6」は直径6mmが3カ所あることを意味します。旧JISでは「3-∅6」と表記されています。

2)板の厚さ「t」

 板金などの厚さはt(ティー)で表し、「t2」は厚み2mmの意味です。正面図の近辺に表示されます(図6)。

図6 厚さを表す「t」
図6 厚さを表す「t」
板金などの厚さを表すのに使う。(出所:西村 仁)
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3)45°の面取り「C」

 直角で交わる面の角に45°の面を付ける加工を面取りといい、面取り記号C(シー)で表します(図7)。

図7 45°の面取り「C」
図7 45°の面取り「C」
直角に交わる面に45°の面を付ける加工。(出所:西村 仁)
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 面取り加工の主な目的は、加工時に発生するバリの除去です。バリは切削加工でも成形加工でも物理的に発生します。ケガ防止および精度低下を防ぐために、加工後に加工者の手作業などでバリを取ります。

 このバリ取りの指示に面取り記号Cが用いられます。昔の図面では「糸面取り」と指示していましたが、現在は数値化が必要なので、C0.1~0.3が目安になります。多くの企業では個々に指示するのではなく、図面の原紙に「指示なきコーナーにはC0.1~0.3を加工のこと」と一括指示しているのが一般的です。

4)正方形の辺「□」

 断面形状が正方形の場合に、正方形を□(カクと呼ぶ)で表せます。円柱と直方体が合体したような図8の場合には、この□記号を用いると、一面図で形状を表現可能になります。この図面内に細線で描かれた対角線の×は「平面」を意味します(描かない場合も多い)。

図8 正方形の辺「□」
図8 正方形の辺「□」
断面形状が正方形の場合に□(カク)で表せる。(出所:西村 仁)
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