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 図面に示される大きさや形状に対して、実際に完成した部品などに許される誤差(ばらつき)の範囲を表すのが公差です。この公差には「寸法公差(サイズ公差)」*1「幾何公差」「はめあい公差」の3種類があります。今回は、主として物体の大きさを示す長さ寸法を対象とする寸法公差について説明します。幾何公差とはめあい公差は次回で紹介します。

*1 寸法公差
JIS Z 8317-1:2008『製図―寸法及び公差の記入方法―第1部:一般原則』で「寸法公差:上の寸法許容差と下の寸法許容差との差」と定義される。ただし長さ寸法の公差記入法を規定するJIS B 0401-1 は2016年の改正(JIS B 0401-1:2016)で、規格の名称が『製品の幾何特性仕様(GPS)―長さに関わるサイズ公差のISO コード方式―第1 部:サイズ公差,サイズ差及びはめあいの基礎』となり、寸法公差を「サイズ公差」と呼ぶようになった。改正前のJIS B 0401-1:1998の名称は『寸法公差及びはめあいの方式―第1 部:公差,寸法差及びはめあいの基礎』だった。

合否の判定に不可欠な公差の指示

 まず、なぜ公差が必要なのかを説明しましょう。図面には、幅・高さ・奥行きや直径といった寸法の狙い値(基準寸法、図示サイズ)が示されています*2。例えば、50mmと示されている場合、加工者は50mmを狙って加工します。しかし、加工後の測定値が50mmジャストの50.000…mmのように限りなくゼロが続くことはありません。50.01mmや49.98mmといったようにどうしてもズレが生じます。

*2 「狙い値」は、JIS Z 8114:1999『製図―製図用語』やJIS Z 8317-1:2008では「基準寸法」、JIS B 0401-1:2016では「図示サイズ」と呼ぶ。

 このような狙い値に対してのズレは、狙い値を50mmと指示した設計者もある程度は想定しています。例えば、49.9mmから50.1mmの間であればOKといった具合です。この想定を示したのが公差です。もし公差の指示がなければ、検査しても合否を判定できません。

 3種類の公差のうち、寸法公差(サイズ公差)は長さや角度の大きさに関するもので、幾何公差は形状の正確さや位置と姿勢を扱い、はめあい公差は軸と穴の関係を記号で示します。現状の図面で多く適用されているのが寸法公差ですが、幾何公差やはめあい公差が指定されている図面もあります*3

*3 JIS B 0001:2019『機械製図』では「長さに関わる[長さの単位(mm)をもつ]“寸法”には,“サイズ”及び“距離”の2種類がある。この規格(JIS B 0001)で使う前者の“サイズ”とは,サイズ形体の大きさ,すなわち,円・円筒の直径,相対する平行二平面の幅などのことであり,サイズ公差による規制が可能である。後者の“距離”には,例えば,穴の中心間距離,段差の距離などがあり,幾何公差による規制が可能である」との注記がある。