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 本連載の図面編では前回まで、立体を第三角法や断面図を使って描く方法、寸法や公差を図示する方法などを解説してきました。図面編の最終回となる今回は、表面の形状的な状態を表す「表面粗さ」の指示と、溶接の指示に用いる記号を紹介します。

なぜ表面粗さの指示が必要なのか

 一見すると平面であるものの表面を指でなぞってみれば、ザラザラであったり、なめらかであったりとさまざまです。実際、表面を拡大すれば少なからず凹凸があります。この表面の凹凸の程度を示すのが、表面粗さです*1

*1 現在のJIS規格(日本産業規格、2019年に日本工業規格より改称)では、表面粗さを「表面性状」と表記している。

 では、表面粗さを寸法公差で指示できないのでしょうか。例えば100mm±0.1mmで加工したところ、表面の凹凸が大きかったからといって、公差を±0.05mmに厳しくしても、表面粗さの改善にはつながりません*2

*2 寸法精度と表面粗さに相関関係はあるが、寸法精度を高くしても表面粗さが保証されるわけではない。

 ノギスやマイクロメーターでの測定をイメージすると分かりやすいと思います。測定工具が接触するのは対象物表面の凸部となるため、寸法の管理では凹凸の度合いをコントロールできません。こうした理由から表面粗さは、寸法公差とは分けて個別に指示する必要があるのです。