固有技術の知識は材料、加工、読図
部門を問わずに共通となる基礎知識のうち、ものを造るのに必要な固有技術の知識が、これまでの連載で紹介してきた「材料知識」「加工知識」「読図知識」になります。再度振り返っておきましょう。
1つめの材料知識は、多くの種類がある中から必要とする材料を選択するための知識です。また資材購買部門や品質管理部門などでは、なぜこの材料が選ばれたのかを知るための知識になります。
2つめの加工知識は、丸棒や平鋼といった限られた市販形状から狙いの形状にするために、最適な加工法を判断するための知識です。刃物で削る(切削加工)、金型で成形する(成形加工)、材料を溶かして型に流し込む(鋳造・射出成形)といった知識は、資材購買部門にも必要な知識になります。図面を見てどの加工先に依頼すればよいかを判断する必要があるからです。
3つめの読図知識は、情報の伝達手段である図面から正確に情報を読み取るための知識です。自社の開発部門や顧客が作成した図面を読めてはじめて、ものづくりが可能になります。顧客との最前線で活躍する営業部門の担当者は、図面を読めれば顧客の意図を的確に理解でき、自社の販売促進に生かせます。
管理技術の知識は品質、原価、生産の管理
次に、効率良く造るための管理技術の知識を見てみましょう。管理技術も3つに分けられます。「品質管理」と「原価管理」と「生産管理」です。
1つめの品質管理は、図面通りに造れているかを検査するだけではなく、不良を造らない実力のある現場を目指し、不良発生を予防する仕組みづくりを管理する技術です。
2つめの原価管理は、製品1つずつの原価を把握し、計画と差異の生じる原因を調査して、コストダウンにつなげる技術です。原価が分かれば、適切な売価設定や販売戦略にも生かせる大切な管理技術になります。
3つめの生産管理は、顧客の希望納期に対して生産を開始するタイミングを適切に設定するとともに、在庫を持って対応する際には在庫量を適正にコントロールするための管理技術になります。
基礎知識は広く浅く、専門知識は狭く深く
ものづくりに必要な基礎知識は、以上の3つの固有技術と3つの管理技術に関するものになります。学校であれば、国語、数学、理科、社会、英語の5教科の基礎知識を習得したら、その上に各科目それぞれで均等に知識を積み重ねていき、不得意科目をつくらないようにするでしょう(図2)。しかし私たちビジネスの実務では、どの分野も細分化され専門性が高くなっているので、全てを網羅するのは現実的ではありません。
そこで、基礎知識を習得したら、自身の担当分野の専門知識の習得に集中する必要があります。すなわち「基礎知識は広く浅く」「専門知識は狭く深く」が能力を向上していく上での方向性になります。
利益につながる管理技術
ここまで知識の習得について整理し、今後のステップアップに向けた方向性を紹介しました。今後の連載では基礎知識として、固有技術に続いて管理技術について解説していきます。詳細な解説の前に、少し視野を広げて企業の利益に管理技術がどうつながるのかを紹介します。
企業でのお金の流れを見ると、入ってくるお金(入金)と、出ていくお金(出金)があります。入ってくるのがほぼ売上金であるのに対して、出金の内容は多岐にわたります。材料費からはじまり、人件費、設備や治具の購入費、電気代、工場の土地や建物にかかる費用などがあります。利益は当然ながら、入金から出金を差し引いた金額になります(図3)。
利益を増やすためには「いかにして入金を増やすか」と「いかに出金を最小限にするか」の取り組みが必要です。入金、つまり売り上げを増やしつつ、効率良く造ることで出金を最小限にするのです。