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「考えた質」と「できばえの質」

 ものづくりは、「何を造るのかを考えて」、「考えた通りに造る」という流れになります(図2)。考えるのは企画部門や開発部門、造るのは製造部門、品質管理部門、生産管理部門、資材購買部門が担当しています。

図2 設計品質と製造品質
図2 設計品質と製造品質
顧客の満足を得られるように、造りやすくするように考えた内容が設計品質。造ったできばえの質が製造品質。(出所:西村 仁)
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 顧客の満足を得るためには、「考えた内容」と「造ったできばえ」の両方が求められます。考えた内容に魅力がなければ、顧客には見向きもされません。一方、考えた内容が良くても、購入したらキズが入っていたり、ねじが緩んでいたりすると顧客は不満に思います。

 この考えた内容の質を「設計品質」、造ったできばえの質を「製造品質」といいます。やさしい言葉を使うなら、設計品質は「狙いの品質」、製造品質は「できばえの品質」と捉えると分かりやすいと思います。このように品質は2つに分けて捉えるのが大切です。設計品質が悪ければ、魅力がないので買ってもらえませんし、製造品質が悪ければ不良品になってしまいます。

 設計品質には「顧客を引きつける魅力のある品質」という役割に加えて、もう1つ「ものづくり現場での造りやすさの品質」を確保するという大事な役割を持ちます。ものづくり現場は、情報の伝達手段である図面通りに過不足なく造るのが使命です。すなわち図面が基本になるので、加工しにくい図面や、組み立てにくい図面であれば、ものづくり現場が苦労を背負わなければなりません。

設計品質と製造品質に分ける必要性

 ものづくり現場において不具合の発生が判明した場合、人は「判明した場所(ものづくり現場)に原因がある」と思い込むクセがあります。しかし、実際には不具合が発生した原因は設計部門にあり、設計品質の問題として扱うべきケースもあります。

 例えば、凹凸の部品同士をはめあわせる作業があったとします。この工程で凸部品のはめあい面にキズ不良が発生すると、途端に作業方法の見直しが始まります。ゆっくりとはめるとか、凹部品の縁の部分に紙やすりで面取り作業をするといった対策です。

 しかし、凹凸部品の図面における寸法精度(公差)において、はめあわせた際のスキマがゼロとなる「ゼロ嵌合」の公差値になっていたらどうでしょう。接触してキズが発生するリスクは当然に生じます。キズが問題になる製品なのであれば、見直すべきはものづくり現場での作業方法ではなく、図面の寸法精度です。

 この事例のように設計品質の問題をものづくり現場で対応しようとするケースは、決して珍しくありませんが、これでは根本的な解決にはなりません。品質の問題が発生した際に、解決に向けて最優先で確かめるべきは、問題の原因が設計品質にあるのか、製造品質にあるのかの見極めです。そのためには、設計品質と製造品質を区別して捉えておかなければなりません。

 これにより、設計品質と製造品質を両方備えた高い総合品質を目指します(図3)。

図3 設計品質と製造品質を分ける必要性
図3 設計品質と製造品質を分ける必要性
設計品質と製造品質を分けて捉えないと、製品の品質確保や問題への的確な対応が難しくなる。(出所:西村 仁)
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