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改善を進める手順とコツ

 品質改善に限らず、コスト削減や生産期間の短縮といった現場改善の進め方では、「PDCAサイクル」と「QCストーリー」がよく知られています。PDCAは計画(Plan)、実施(Do)、確認(Check)、処置(Action)の頭文字をとったものです。目的と目標を定めて達成する方法を決め、計画通りに実施します。その結果を確認し、当初の目標に達すれば新たな方法に変更します。目標に未達であれば、未達分を解決するためにPDCAを繰り返すので、PDCAサイクルと呼ばれます。

* PDCAのAは「Act」とする場合があるが、実質的に意味は変わらない。

 QCストーリーは、図1のようにPDCAをさらに細分化したものです。改善の目標値設定は、現状を緻密に把握してから決める場合もあれば、経験則から期待値を込めて“えいやっ”で決める場合も多いと思います。後者の場合の目標値は「30%の改善」がお勧めです。例えば、寸法不良の30%削減といった目標値です。「10%の改善」では通常のばらつき内に入ることもあり、いまひとつインパクトに欠けます(実際には10%でも効果は絶大なのですが)。

図1 PDCAとQCストーリー
図1 PDCAとQCストーリー
QCストーリーは、計画(Plan)-実施(Do)-確認(Check)-処置(Action)からなるPDCAを細分化して、QCへ適用させて作成する。(出所:西村 仁)
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 一方、「50%の改善」になると相当に難易度が高まります。不良率でもコストでも生産期間でも、現状の半分となると改善の成果が見えるまでに相応の時間を要するため、改善メンバーのモチベーションの維持も難しくなってきます。

 それに対して「30%の改善」は現実的な目標値です。何かの問題の30%削減を達成すれば、さらに30%削減に取り組むと、PDCAの2回転で改善前よりほぼ半減できます。

ブレーンストーミングのコツ

 略して「ブレスト」とも呼ばれるブレーンストーミングは、チームでアイデアを生み出す会議の手法です。米国で約100年前に広告代理店を創立したオズボーン氏(Alex Faickney Osborn)によって考案されました。もともと商品開発や販売戦略を対象としていましたが、ものづくり現場での会議にも有効な手法です。

 問題が生じた際の原因分析や、改善策の検討に生かせます。4~5人ほどでチームを組んでワイワイガヤガヤと議論します。

 ブレーンストーミングには、次の4つのルールがあります(図2)。

図2 ブレーンストーミングの4つのルール
図2 ブレーンストーミングの4つのルール
思いもよらないアイデアや考えが出るというブレーンストーミングの効果を得る上で、議論をうまく進めるルールは重要。(出所:西村 仁)
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  • 1)他人の発言を批判しない
  • 2)自由奔放な発言を歓迎する
  • 3)質より量を求める
  • 4)他人のアイデアに便乗する

 公開セミナーなどで、このブレーンストーミングを行うと、とてもうまく機能し、思いもよらないアイデアや考えが出てきて、ブレストの効果を実感します。しかし、職場に戻ってやってみても、うまく機能しない場合があります。例えば、若手が発言した際に、先輩や熟練者が「これまでの経験からそれはうまくいかないよ」といった発言が出てしまうと、良いアイデア創出につながりにくくなります。

 うまくいかなかった過去の経験談は貴重なノウハウなのですが、少し条件を変えれば結果は変わってくる可能性があります。もしかすると根拠のない思い込みがあるかもしれません。過去の経験談としての意見は大いに結構なのですが、単なる批判になると、そこからは誰も発言しなくなってしまいます。

 もう1つの難しさは、4番目の「アイデアの便乗」にあります。ともするとアイデアの便乗は、フリーライダー(タダ乗り)のイメージを伴ってしまうためです。アイデアの豊富なメンバーは、会議が始まるや否やいろいろな案を提示しますが、後半になるとどうしてもネタ切れになってきます。そうしたときに、前半にまったく意見を出さなかったメンバーが、これまでのアイデアに便乗した意見を出すと、雰囲気が悪くなりがちです。採用されたアイデアは、最後に発言したメンバーによる意見とされるため、元のアイデアを出したメンバーは注目されず、不公平感を生む場合があります。

 こうした弱点があるので、ブレストを始める際には、毎回この4つのルールをメンバー間で確かめることも有効です。ルールから外れた意見が出たときに、うまくリードする司会者のスキルも大切になります。