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 前回は品質改善に取り組む具体的な方法として、アイデア発想法の「ブレーンストーミング」、「QC七つ道具(QC7つ道具)」の「パレート図」を紹介しました。今回も引き続き、品質管理に生かす手法について解説します。

 今回はQC7つ道具の「チェックシート」と「特性要因図」を活用するコツと、「管理図」についてです。各手法の作成方法といった詳細の解説は専門書に任せるとして、ここでは実務に生かすコツをお伝えします。

チェックシート活用のコツ

 チェックシートの狙いは2つあります。1つは現状や課題を数値として捉える上でデータを収集(データ取り)するための「調査用」として用いること。もう1つとして、現状を維持するための「点検用」としての利用法があります。

 チェックシートを使う際には、しばしば“フォーマットの作成”に重きが置かれますが、“運用ルールの作成”も大事なポイントになります。不良品のデータ取りであれば、不良が発生するたびごとに記入するのか、もしくは1ロットのデータ取りが終了してからまとめて記入するのか。個数や件数を数えて記入する際は、5画の「正」の字で書き込むのか、縦線4本を並べて書いたあとに重ねて5本目を斜めに入れるなど海外でよく見る方法にするのか、といった運用ルールを事前に決めておきます。

 不良原因を究明する上では“不良の発生箇所”がとても有効な情報になります。これを記録するには、チェックシートに対象物のイラストを描いておき、不良箇所をイラストの上に「×」で記入してもらいます(図1)。

図1 調査用チェックシートの事例
図1 調査用チェックシートの事例
検査対象物のイラストを入れておき、不良のあった場所を「×」印で記入する。(出所:西村 仁)
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 記入済みのチェックシートを集めて、パラパラ漫画のように連続して見れば、不良箇所の傾向が一目瞭然です。不良は全体にバラツキなく平均して発生することは非常に珍しく、発生が多い箇所と少ない箇所に分かれるのが一般的です。このように差を見極められれば、前工程から順番に、この差が生じている箇所を比べて変化を見るなどすると原因を追究しやすくなります。

 発生箇所の情報を数値化したい場合には、イラスト上に方眼紙のように網掛けし、各マス目に入った「×」の数を数えます。例えば縦軸方向を1、2、3……、横軸方向をI、II、III……と将棋の棋譜のように識別して、マス目ごとに×の個数を数えて(例えば2-IIIは5個など)、数値化していきます。

データ取りには期限を設けること

 データ取りには期限を設けてください。今まで一度もデータ取りをしたことがなくても、丸1日あれば十分なデータが取れると思います。1日で不足なら2日でも3日でもよいのですが、必要以上のデータ取りは意味を持ちません。

 自分で実際に行ってみるとよく分かるのですが、通常作業をこなしながらデータを記録する作業は、思っている以上に手間がかかります。このデータ取りという作業負担を経てまで取得したデータですから、いかに生かすかが大切です。データ数は多ければ多いほど信頼性が高まるものの、一定のデータ量があれば改善には十分です。